新近江名所図会
新近江名所圖会 第185回 一本の大木が目印 トギス塚古墳と千増供古墳群
(近江八幡市千僧供町)
国道8号を野洲から近江八幡市街地へ向かって車で走り、六枚橋の交差点を左折して、県道14号を旧蒲生町方面に進んだあたりには、たくさんの遺跡があります。左前方の山には近江八幡市と東近江市にまたがる柴田勝家の居城であった瓶割山城(別称:長光寺山城)があります。また、その西の支峰に位置する岩倉山からは、城の石垣や石臼などに使われる良質の石材が採れますから、このあたり一帯には古くから石工がいたことがわかっています。ちなみに、岩倉の石工は、豊臣秀吉の大坂城や聚楽第の普請にも動員された記録が残っています。
そして、当然のことですが、良質の石材はさらに古い時代の古墳の石室にも多く使われていました。岩倉山から国道8号までの間の、近江八幡市馬淵町から千僧供町にかけての一帯には、すでに消滅した古墳も含めて十数基以上から構成される千僧供古墳群があります。多くは現存していませんが、住蓮坊古墳・供養塚古墳・トギス塚古墳・岩塚古墳の4基(いずれも県指定史跡)が残っており、見学することができます。
これらの古墳は、墳長約60mの円墳である住蓮坊古墳(5世紀中頃)が最も古く、次に、墳長52mの帆立貝形古墳である供養塚古墳(5世紀後葉頃)がそれに続きます。さらに、6世紀末頃のトギス塚古墳、7世紀前半頃の岩塚古墳へと、約200年にわたって築造されたこの地域の首長墓と考えられています。とくに、供養塚古墳からは人物埴輪・馬形埴輪・家形埴輪などの多彩な埴輪が出土しています。
今回取り上げるトギス塚古墳は、馬見岡神社鳥居前の道を西へ約10m進んだ道路ぎわにあります。すでに墳丘は削られてなくなっていますが、よく見ると滋賀県教育委員会が立てた説明板があります。その説明板の横に二股に分かれた大木があるので、それを目印にするとわかりやすいでしょう、一見すると、説明板はこの木の説明のために立てられているかのようですが、この木の下には石室の一部が露出しています。墳丘は直径15~20mと考えられており、現存する石材の配置等から全長約5mの横穴式石室であると推定できます。
おすすめpoint
この地域には多くの古墳・遺跡や神社があり、気候がよい時分には散策にもってこいです。このコーナーで以前に紹介しました椿神社・馬見岡神社・明神池、さらに、足をのばせば、滋賀県指定史跡八幡社古墳群や史跡雪野山古墳と多様な文化財に触れることができます。
なお、千僧供集落内には千僧供地域歴史資料館があり、千僧供古墳群をはじめとする地域の歴史資料が展示されています(〔開館日〕毎週土・日、祝日のみ。〔開館時間〕午前10時~午後4時)。〔入場料〕無料。)。
アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線近江八幡駅南口より、近江バス「北畑口行」または「長峰集会所行」に乗車して、「岩倉」下車、徒歩10分。
【自家用車】 名神高速道路竜王ICから、北へ約20分、駐車場無し。
(中村健二)
-
タグ:
- 近江八幡市