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新近江名所図会

新近江名所圖会 第67回 竹生島への道しるべ-長浜市曽根町所在の道標-

長浜市
滋賀県長浜市曽根町

琵琶湖の北湖に浮かぶ竹生島は、西国三十番観音霊場として知られる宝厳寺(真言宗)があります。また、竹生島の弁財天は宮島、江ノ島とならぶ弁財天三霊場として知られています。そしてこの竹生島に寄せる篤い信仰は、地元浅井の地に現代も連綿と引き継がれています。その代表的なものとして「蓮華会」と呼ばれる年中行事があります。
蓮華会とは、おもに旧浅井地区から選出された先頭、後頭と呼ばれる二組の夫婦が、竹生島から弁財天、御幣、榊などを預かり、近在の人々とともに丁寧にお奉りして、例年八月十五日に再び竹生島へ返し、弁天堂で厳粛に蓮華会の法要を営む行事です。この竹生島蓮華会のおこりは古く、貞元二年(977年)の古文書の記載が知られています。
この竹生島、京都・大阪方面から訪れるには、西近江経由で高島市今津港からと北国街道が利用されました。北国街道は、彦根市鳥居本宿で中山道から分岐して北上し、長浜、曽根、速水、木ノ本を経て北陸に至る主要な道路でした。

おすすめPoint

道標
道標

曽根町小字東福寺の街道沿いには「左竹生嶋道」と刻まれた石の道標が建っています。
道標とは、主要な町や村を通る道路の分岐点に目的地までの方向や距離を示すため設置されたもので、その多くは江戸時代にその土地の有力者によって寄進されたものです。かつての道標の役割は、大坂や京の町人をはじめとする遠来の旅人を案内することで、ここ曽根の地から西方へもうしばらく歩くと早崎の港があり、そこへ導くための案内板でした。早崎の港からは竹生島へ向かう舟に乗ることができたからです。
この道標は花崗岩製で高さ約3.1mを測ります。裏の銘より文久二年(1862年)の建立であることがわかっています。この道標は、今までに少なくとも二度移動しており、建立当時は、南へ100mほどの街道沿い、現在の曽根公民館近くにあったとされています。近年の北国街道の改修工事までは、道路を挟んで東側に立派な松の木とともに威容を誇っていました。

【裏】文久2年の銘
【裏】文久2年の銘

現代は自動車社会、徒歩や荷車、馬車の時代のなごりとして道ばたにそっとたたずんでいる石の道標は、時代の流れのなかでじゃまもの扱いされ、様々な事情によりまったく別の場所に移設されることがあります。そうした道標は、残念ながら道標としての役目は終えています。いっぽう、古い道標が新たに見直され、曽根にみる道標のように整備された環境のなかで地域の人々に見守れながら、大切に保存されている例も多くみられます。近くの街道を歩いて、また、自転車に乗ってこうした道標を訪ねてみてはいかがでしょうか。

周辺のおすすめ情報

早崎の港があったといわれる早崎内湖は現在ビオトープ事業が進められており、冬場には越冬のために飛来するコハクチョウの群れを見ることができます。そして、近くには道の駅湖北水鳥ステーションや湖北野鳥センター、琵琶湖水鳥湿地センターなどがあります。地元の新鮮な野菜や特産物が入手できたり、飛来する野鳥について学ぶこともできます。
これらの施設からは正面に竹生島や、遠くに湖西の山並みを望むことができます。さらに、日本夕陽百選にも選ばれた、琵琶湖に沈む夕陽の情景も楽しめます。また、湖辺は天然記念物のオオヒシクイやコハクチョウの越冬地になっています。冬場には水鳥を間近に観察することが出来、カメラを携えた多くの人が訪れます。

アクセス

【公共交通機関】JR琵琶湖線長浜駅下車、近江鉄道バス乗り換え曽根下車、徒歩10分
【自家用車】北陸自動車道長浜IC下車、国道8号曽根北交差点を右折


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(中川 正人)

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