新近江名所図会
新近江名所圖会 第73回 依智秦氏の里-依智秦氏の里古墳公園
渡来系氏族の「依智秦」氏をご存知でしょうか。おそらく「秦」氏といえば、京都の嵯峨野周辺を本拠地とし、弥勒菩薩で有名な広隆寺やお酒の神様で有名な松尾大社、そして聖徳太子とも関わりのあった秦河勝を輩出した氏族を思い浮かべる方が多いのでは無いでしょうか。
「依智秦」氏は「秦」氏の一族と考えられ、現在の愛知郡を中心とした湖東平野を本拠地として活躍した古代の渡来系氏族です。10世紀以前の文献を調べてみると、郡の役所の主要なポストを依智秦氏がほぼ占めていたことがわかっており、当時の愛知郡内において絶大な力を誇っていたことが想像できます。近江を代表する渡来系氏族といえるかもしれません。
この「依智秦」氏の墓ではないかと考えられているのが、金剛寺野古墳群をはじめとした愛知郡内を中心に集中して分布する群集墳です。
金剛寺野古墳群、戦前には298基の古墳からなる群集墳であったことがわかっています。ただ残念なことに戦後の開拓により大部分が削平されてしまいました。現在は、残った古墳の内10基を「依智秦氏の里古墳公園」として整備して整備・保存されています。
おすすめPoint
公園内には金剛寺野古墳群1号墳~10号墳が残されています。
その中の7号墳、通称「たぬき塚」古墳は公園を整備する際に発掘調査がされています。天井石はすでに抜き取られてなくなっていましたが、石室を構成する石が基底部から2~3段程度残っており、床面の敷石などが残っていました。
また、玄門部(羨道と玄室の境)には階段状の高さ約40㎝の段、そして左側壁の奥壁側には県内では数例しかない突起石が見つかっています。階段状の施設は湖東平野一帯で30例ほどが確認されており、特徴的な施設といえます。
なお、金剛寺野古墳群は「湖東地域の群集墳(上蚊野古墳群・平柳古墳群)」として県の史跡に指定されています。
この二つの施設はともに復元された石室内に残されています。
周辺のおすすめ情報
湖東地域の見所といえば湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)が外せないでしょう。春は桜、秋は紅葉とシーズンになると遠方から多くの人が訪れます。
この依智秦氏の里古墳公園の近くには、金剛輪寺があります。門をくぐってから石段を登っていくのですが、その両側には紅葉が植えられており、秋の 紅葉シーズンには赤色のトンネルをくぐるようで非常に幻想的な光景です。
また、山門をくぐってすぐ左手には、町立の歴史文化博物館があり、町内の遺跡や寺社仏閣、民俗芸能と一通りの町の文化財をコンパクトに見ることができます。立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線稲枝駅から近江鉄道バス蚊野線「金剛輪寺」下車15分
【自家用車】名神高速道路八日市IC下車、国道307号経由30分、駐車場あり
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(堀 真人)
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