新近江名所図会
新近江名所圖会 第75回 失われゆく風景 -失われた鉄路の痕跡その2:旧近江今津駅
滋賀県内では、近年急速に開発が進んできました。その結果、これまではごく普通に目になじんでいた光景が失われつつあります。その風景を新近江名所図絵の一つとして、ご紹介しようと思います。
第13回に北小松に残されている江若鉄道の線路の痕跡をご紹介しましたが、今回は現在残っている江若鉄道最後の駅舎を取り上げたいと思います。
おすすめPoint
江若鉄道は、浜大津と近江今津を結んでいた私鉄です。その名のとおり近江と若狭を結ぶ鉄道として計画され建設が進められたので、社章は近江のOと若狭のWを組み合わせたものになっており、江若交通と会社の名称が変わった現在でも使われています。
大正10年(1921)に三井寺下~叡山区間が開業。その後、同12年には叡山~堅田、同13年には堅田~和邇、同14年に浜大津と三井寺間が開業され、大津の中心につながりました。同15年には和邇~近江木戸と順次北に路線を延ばしていき、昭和6年(1931)に近江今津まで開業しました。なお、昭和22年には国鉄と京阪電鉄の線路を使って、浜大津~膳所間が開業し、国鉄東海道線と結ばれています。
しかし、ここから先に線路が延ばされることはありませんでした。その後、長年湖西地域の足として親しまれてきましたが、国鉄湖西線(現在のJR湖西線)にその使命を譲り昭和44年に全線廃止されました。
その線路の跡は、湖西線と重複する箇所も多いのですが、痕跡が残されている部分も多くあり、前回(第13回)はその最もいい例として北小松の築堤をご紹介しました。しかし線路の痕跡以外に目を向けると、ほとんどの施設は残されていません。
そのなかで、廃止以来長らく駅舎の建物が残されていたのは、旧堅田駅と旧近江今津駅ですが、旧堅田駅駅舎が昭和60年前後に取り壊された今、残っているのは旧近江今津駅駅舎のみとなりました。
周辺のおすすめ情報
◇箱館そば 鴫野(しぎの)
このお店は、地元の箱館山山麓産のそば粉を使った期間限定で開店している蕎麦屋さんです。
毎年12月上旬から3月上旬まで期間限定で開店しているため、この短い開店期間中には遠方から多くの方が詰め掛けます。地元でしか味わえない箱館そば、ぜひご堪能ください。
◇海津の石積み
平成20年に全国で5番目に重要文化的景観に選定されました。
マキノ町知内川の河口部周辺の湖岸から琵琶湖から眺める桜で有名な海津の地域が中心で、石積みをはじめ、河川や内湖、共同井戸、知内川で続けられている伝統的なヤナ漁などがその対象です。
海津は古くから湖上交通の北の玄関口の一つとして栄えた宿場町で、湖岸には、風波から家宅を守るために江戸時代に代官西与一左ェ門によって作られた、城壁を思わせる古い石積が延々約1.2kmにわたり残っており、往時の繁栄を偲ばせる雰囲気をかもしだしています。散策してみては。
アクセス
【公共交通機関】JR湖西線近江今津駅下車、徒歩10分
【自家用車】国道161号バイパス今津南ランプ(大供ランプ)下車5分、駐車場なし
より大きな地図で 新近江名所図会 第51~100回 を表示
(岩橋 隆浩)
-
タグ:
- 高島市