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新近江名所図会

新近江名所圖會 第261回 こんなところに老舗博物館~JR大津京駅ミニ展示~

大津市
大津京01
展示替えの様子
大津京02
資料の固定 破片も全部動かないようにしています
大津京03
作業中でももちろん見学可です

JR湖西線は、日本国有鉄道湖西線として、昭和49年(1974年)9月20日に開業しました。路線上にある多くの遺跡で発掘調査が実施され、非常に大きな成果があがりました。この成果を社会に還元すべきであるとの考えから、日本鉄道建設公団と滋賀県教育委員会との間で協議がもたれ、西大津駅(現在のJR大津京駅)に文化財展示スペースを設け、継続的に文化財の展示・普及を実施することとなったのです。以来、今年で43年。その間、昭和62年(1987年)の国鉄民営化、平成20年(2008年)の「大津京駅」への呼称変更などを経て、歴史ある文化財展示スペースとして、今も多くの方に愛されています。

【おすすめPOINT】
これまで様々な企画展示を行ってきた大津京駅展示スペースですが、平成26年(2014年)からは「湖西線各駅停車遺跡めぐり」として、大津市教育委員会の協力を得て、それぞれの駅を取り上げ、周辺の遺跡を紹介しています。展示替えは年間3回。現在は1月末・5月末・9月末に実施しています。運が良ければ、担当者が展示替えをしている場面に遭遇するかもしれません。チャンスは、上記の時期の午前中です。
展示内容をご覧いただきたいのはもちろんですが、他にも注目していただきたい点があります。それは資料の固定方法。展示スペースの前でしばらく立ち止まっていただければわかると思いますが、電車が通るたび、この駅舎は実はけっこう揺れます。つまり資料を展示するには、なかなか危険な場所と言えます。にも関わらず、できるだけ本物を見てほしい。ということで、資料が転がってしまわないよう、展示台にしっかりと固定しているのです。けれど、紐や色々な道具でガチガチに固定してしまうと、こんどはそれらが邪魔で資料が見にくくなります。また、固定具で逆に資料を傷つけてしまうかもしれません。
そこで、透明で弾力のある釣り糸(テグス)にクッションとして透明のゴムチューブをかぶせ、展示台に固定しています。これは多くの博物館で、主に高さのある資料について転倒防止のために行われる方法ですが、大津京駅の展示ではこの固定作業をすべての資料について行わねばならず、非常に手間がかかります。また、資料自体も、接合部分が多くて破損の可能性があるものは展示できないため、かなりの制約を受けます。このような地味な工夫と苦労が詰まった展示、ぜひ隅々までごらんください。

阿刀弘史

【おすすめ周辺情報】
南の方へ15分程歩くと、大津市歴史博物館があります。
北西へ進めば、本連載の第20回で取り上げた皇子山古墳や錦織遺跡などが、そのさらに北には近江神宮があります。近江神宮の南側の道を上っていけば、織田信長家臣・森可成が討ち死にした宇佐山城もあります。
また、一駅乗って、次の唐崎駅で降りて山の方へ20分程歩くと、大津市埋蔵文化財調査センターがあります。こちらでも定期的に文化財の展示を行っており、見学することができます。

【アクセス】
JR湖西線 「大津京駅」 下車 改札構内

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