新近江名所図会
新近江名所圖會 第369回 伊吹山の魅力が詰まったワンダーランド―米原市・伊吹山文化資料館―(後編)
前回は、伊吹山文化資料館の展示室の内容や雰囲気などをご紹介しましたが、今回は〔おすすめPoint〕と〔周辺のおすすめ情報〕です。
◆おすすめPoint
資料館に来たら見たいものはいろいろあるのですが、とりわけ私のお気に入りは、受付のところで出迎えてくれるキューピーさんです。(写真2)このキューピーさんは『東草野の山村景観』として重要文化的景観に指定された奥伊吹の集落の一つ、甲津原(こうづはら)で織られた雪晒し(早春の雪にさらして麻布を漂白する技法。今は廃れてしまった。)の生地でつくった衣をお召しになり、勾玉の首飾りをつけています。(勾玉づくりは資料館の体験学習の人気メニューの一つです。)
いつ来ても変わりなく出迎えてくれるこのキューピーさんの愛らしい姿は、この資料館の親しみやすく温かい雰囲気と懐の深さを表していると思います。また、玄関先にはイブキジャコウソウ(写真3)やトウキなど、ここ伊吹ならではの草花の鉢植えがならび、玄関口あたりには伊吹山の苔でつくった苔玉、季節の花などがいつもさりげなく飾られ、居心地のよい空間を醸し出しています。
とにかく、伊吹山のことを知りたければぜひ行ってみる価値はあります。各種分野の展示はてんこ盛りで見どころ満載。興味があるところは人それぞれなので、見たいところからご覧ください。
◆周辺のおすすめ情報
資料館から歩いて数分のところに「大平(おおひら)観音堂」があります。伊吹山中には平安時代以降、伊吹山四ヶ寺(弥高寺・長尾寺・太平寺・観音寺の四ヶ寺。平安時代の護国寺が鎌倉期に分立)と呼ばれる山岳寺院があり、国家的な祭祀が行われていました。伊吹山から西に張り出す尾根の中ほど、標高約450m付近にあった太平寺(たいへいじ)もその一つで、鎌倉時代には強い勢力を持ち、戦国期には城塞化するなど変化を見せていきますが、江戸時代にはわずかの坊が残っていたとされます。この集落では特産の石灰を生産していたようですが、時代の流れの中で、山仕事で生計を立てていくことが苦しくなっていったようです。昭和38年(1963)の大豪雪で集落が孤立したことや、集落情報の斜面がセメント鉱山になったのを機に、昭和39年、長くお守りしていた観音様のとともに、村は麓の春照(すいじょう)に集団移転し、集会場を兼ねたお堂を建立、ここに十一面観音を安置しました。この十一面観音は、江戸時代の仏師、円空の傑作の一つとして知られています。像の高さは180㎝ほどもある大作で、円空はたった一日で彫り上げたといいます。このお堂では貴重な仏様を間近から拝観させていただけます。
◆アクセス
【公共交通】JR東海道線近江長岡駅からバスまたはタクシー
・湖国バス「伊吹登山口」行で「ジョイいぶき」下車 徒歩8分 (ただし12月から4月末は土日祝運休・詳細は湖国バスのHPをご確認ください。)
・まいちゃんバス(近江長岡駅~甲津原間を定時定路線運行する予約不要の乗合タクシー(ワゴン車)・平日のみ運行)で「ジョイいぶき」下車 徒歩8分
・まいちゃん号(予約型乗合タクシー(小型タクシー)・年中無休)近江長岡駅〔山東伊吹共通60〕乗車→伊吹中学校〔山東伊吹共通86〕下車 徒歩3分〈まいちゃん号の予約:0749-52-8200〉
※まいちゃんバス、まいちゃん号の利用方法については米原市のHPをご確認ください。
【自家用車】名神高速米原JC・関ケ原IC、北陸道長浜ICから約15分
〔伊吹山文化資料館〕開館時間;9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日;月曜・祝日の翌日・年末年始
入館料;一般200円(中学生以下100円)
〒521-0314 滋賀県米原市春照77
℡・Fax 0749-58-0252
http://www.zb.ztv.ne.jp/mt.ibuki-m/
〔大平観音堂〕要予約 第1・3日曜日午後13:00~15:00のみ拝観可能・拝観料300円
※必ず予約してください。連絡先は資料館(0749-58-0252)になります。(館から管理者に連絡してくださいます。)拝観時のご案内、解説は保存会の方がしてくださいます。
※コロナウイルス感染症対策のため、しばらく拝観を休止していましたが、2021年秋ごろからは少しずつ対応しておられるそうです。ただし、大人数は受けておられません。個人の方、少人数単位でのみ対応可能とのことです。また、大型車は進入困難なので資料館の駐車場をご利用ください。
※感染症の拡大状況等によって休館、拝観休止になることもありますのでお出かけの際には事前にご確認ください。
(小竹志織)