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社殿右側の大スギ

新近江名所図会

新近江名所圖会 第169回 春日神社の大スギ

長浜市

(長浜市高月町宇根)

社殿右側の大スギ
社殿右側の大スギ

春日神社の大スギの木は、長浜市高月町宇根の集落にその存在感を示して威容を誇っている。県道に面した神社の境内に入っていくと、立派な杉が目に飛び込んでくる。社殿の右脇にそびえ立つこの大スギにはおごそかに注連縄が巻かれ、保護のためか石柱で囲まれている。この大スギの樹齢は不詳であるが、樹高は25m、幹のまわりは6mほどである。天然記念物には指定されていないが、湖北地方のこの地には、まだ多くのケヤキやスギの大木が残っている。
御神木に多い樹種であるスギやヒノキが、日本の針葉樹の代表格であることは、今も昔も変わらない。とくにスギは木目が通り、年輪が密になればいろいろな用材として重宝されてきた。数千年前の縄文時代には長大な丸木舟が作られ、びわ湖や大小の河川、そして内湖や沼地を行き来していた。弥生時代から古墳時代にかけては、スギの素直な木の特徴を生かした生活用具がみられる。そのひとつに、木製合子と呼ばれる容器がある。木桶とそのフタからなるもので、近畿地方北部から北陸地方にかけて数多く作られた。また、農耕に欠かせない鋤にもスギが利用されていたことが注目される。そして現代に至っては、スギを製材して加工した建築材の利用が再認識されていて、床材に利用するなど自然素材としての価値観が高まっていることは喜ばしいことである。

おすすめPoint

社殿左側のスギ
社殿左側のスギ

春日神社のスギについて、とくに印象に残ったことがある。それは、社殿右側にそびえるこの大きなスギに対して、左側に幹まわり2m、推定樹齢30年に満たないスギが立っているのである。この左側のスギは、この神社を守っている人たちが、将来大スギにかわるスギとして準備しているものである。この小さいほうのスギには、大スギと同様に注連縄が張られ、将来御神木の役目を受け継ぐ用意がされている。このことは、世代を超えて大木に託す、地元の人々の信仰心の深さのあらわれであると感じられた。

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(中川正人)

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