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県道316号と47号の分岐点

新近江名所図会

新近江名所圖会 第175回 滋賀県道316号比叡山線

大津市
県道316号と47号の分岐点
県道316号と47号の分岐点

今回の新近江名所図絵は、ある県道をご紹介しましょう。
「何で名所に県道やねん!」と言うお叱りの声が聞こえてきそうですが、この県道316号比叡山線、他の県道とイメージがずいぶん違うところがあったり、また見どころも多いので、ご紹介しようと思い立ったわけです。
滋賀県道316号比叡山線は、比叡山を起点として国道161号の大津市下阪本6丁目に至る道です。この県道を国道と交差する下阪本6丁目からたどっていきましょう。国道から分かれて日吉神社や坂本の町の方へしばらく進むと、JR比叡山坂本駅のある大きな交差点に至ります。この先は急に道幅が狭くなり、延暦寺の門前町である坂本の町へと入っていきますが、昔の町の雰囲気を残す家並みの中を道はまっすぐに延びています。一つ目の石鳥居、京阪電車坂本駅前を過ぎると、大きな石鳥居のある交差点に出ます。この石鳥居をくぐると、道が広くなり道の両脇には延暦寺の里坊がならんでいます。それらを横目に見ながら進むと、車道が左に折れるドン突きになり、右側に朱の鳥居、左側に幅の広い石段が見えます。鳥居の左側には日吉神社と書かれた大きな石柱、石段の右側には比叡山延暦寺と書かれた石柱がそれぞれ立っていることから、ここが延暦寺と日吉神社の入口であることがわかります。左へ曲がって南へと続く車道は、地図で見ると違う県道(県道47号伊香立浜大津線)です。では、今までたどってきた県道はここで終わり?比叡山が起点のはずでは?と思って、石段の脇に立つ案内板を見ると、この石段から続く道が延暦寺の表参道(本坂)で、なんとこの本坂が県道316号比叡山線と書いてあるではありませんか。

本坂の入口
本坂の入口
この看板に本坂が県道である証拠が・・
この看板に本坂が県道である証拠が・・

それではと、比叡山高校を左手に見て石段を登って行くと、すぐに車道が横切りますが、本坂は真っ直ぐのびています。右手に新しい寺院を見ながら行くと、アスファルトの道はやがて砂利道に変わります。ここからがこの道の真骨頂です。かなりの急坂のうえに、流水にえぐられて荒れ放題。「これでも県道か!」と悪態をつきたくなるような道です。少し坂が緩くなりますが、水流でえぐられたあまりよくない道には変わりありません。石仏の鎮座する三叉路からは穏やかな道となり、やがて右手に立派な石垣が現れます。石垣の上には大木に囲まれた小堂と、その傍らには銅板を組み合わせた立派な碑があります。ここからは延暦寺の堂塔が建ち並ぶエリアです。道は右方向に折れ少し登ると、法然が得度を受けた法然堂、最後の急坂を登り切ると、蓮如堂への道を分け、延暦寺会館の前に出ます。会館横の急な石段を登って行くと、頂上に東塔の玄関口である文殊楼があり、それをくぐると、眼下の樹間に延暦寺の中心である根本中堂が見えてきます。比叡山坂本駅からここまで、徒歩で1時間半ほどでしょうか。

文殊楼から見た根本中堂
文殊楼から見た根本中堂
石仏のある三叉路(左に延びる道が県道316号)
石仏のある三叉路(左に延びる道が県道316号)

このようにこの県道は、往時に延暦寺への参詣や僧侶の往来に使われてきた道です。1927年(昭和2年)の坂本ケーブル、1966年(昭和41年)の比叡山ドライブウェイの開通によって、ほぼその役割を終えていますが、おそらくは重要な役割があって、県道として存続しているのでしょう。
県道と言えば自動車が走れるのが普通なのでしょうが、全国的に見れば国道や県道にも、未舗装路・極端な狭隘路・車両通行不可能な道は多く存在し、その方面のマニアもいらっしゃるようです。県内でも石山から京都の醍醐へ越える県道は、山間で登山道となる道として、一部の方の間では有名らしいです。
さてこの県道比叡山線、昔の人たちの苦労を知ることができると同時に、延暦寺に関するいろいろな見どころが満載の道です。沿線の見どころの紹介はまたの機会に譲って、今回はこのあたりで終わります。皆さんも歩いてみてはいかがです?

(岩橋隆浩)

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