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新近江名所図会

新近江名所圖会 第18回 大中の湖南遺跡-旧内湖に眠る弥生集落-

近江八幡市
近江八幡市安土町大中
復元住居 大中の湖南遺跡
復元住居 大中の湖南遺跡

かつて琵琶湖の周辺には多くの内湖が存在していました。琵琶湖の北部から東部にかけて、長浜市早崎内湖、米原市入江内湖、彦根市松原内湖および曽根沼、そして東近江市から近江八幡市にかけては、琵琶湖で一番大きな内湖である大中の湖や小中の湖、西の湖が広がっていました。これらの内湖の多くは第二次大戦前後の食料難の時代に、農地の確保のために、国の施策として大規模な干拓事業が押し進められました。

おすすめPoint

集落のシンボル 木偶
集落のシンボル 木偶

大中の湖では大量の内湖の水が排出されて干拓事業が進むなか、昭和39年(1964年)に内湖の底から古代の土器や古銭など多くの遺物があらわれました。そこで次年度から2年間かけて発掘調査が実施され、弥生時代中ごろの水田跡をはじめとして多種多様な遺物が出土しました。この内湖遺跡の発掘調査は、その後に実施される湖底遺跡の発掘調査のさきがけとなりました。
とくに遺跡の発掘調査の成果として注目されるのは、多様な形態の木製農具類です。これらの遺物は、水田稲作に欠かせない農具がすべて木製で、木質が硬く丈夫なアカガシやケヤキなどで作られています。
また、農村におけるまつりごとのシンボル的な存在であったと考えられる木偶とよばれる木製の人形も出土しています。
これらの遺物の数々は、当時の内湖周辺の集落において、稲作農耕が定着していく過程を復元するうえでとても重要な資料となりました。これらの資料は、滋賀県立安土城考古博物館の常設展示コーナーで見ることができます。
その後大中の湖南遺跡は、昭和48年(1973年)に国の史跡として指定されました。現在は、遺跡のほぼ中央に住居が復元され、内湖に周辺で暮らしていた弥生人の集落をほうふつとさせてくれます。

木製農具出土状況 1965年調査
木製農具出土状況 1965年調査

周辺のおすすめ情報

大中の湖南遺跡の周辺には、特別史跡安土城跡をはじめ、史跡観音寺城跡、史跡瓢箪山古墳などの史跡があります。これらの史跡の概要がよくわかる展示施設として、滋賀県立安土城考古博物館、信長の館、安土城郭資料館(JR琵琶湖線「安土駅」東側)などがあります。

アクセス

【公共交通機関】JR琵琶湖線安土駅から徒歩約30分
駅前でレンタサイクルを利用すると便利、約15分
【自家用車】名神高速道路竜王ICから車で約30分、駐車場なし


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(中川 正人)

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