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新近江名所図会

新近江名所圖会 第83回 墳丘が残る平地の前方後方墳 -滋賀県指定史跡・神郷亀塚古墳

東近江市
東近江市長勝寺八ノ坪
神郷亀塚古墳
神郷亀塚古墳

全長36.5mを測る神郷(じんごう)亀塚古墳は、発掘調査が実施された当時(平成13年)、新聞紙上で「最古級(3世紀前半)の前方後方墳」として注目をあつめました。
滋賀県内では皇子山古墳(大津市)のように丘陵上・尾根上の前方後方墳の存在は知られていましたし、平地では冨波古墳(野洲市)のように「前方後方形周溝墓」の発掘調査事例が増えつつありました。その中で、この神郷亀塚古墳が持つ最大の特徴は、平地に盛土によって造られた後方部が現状で3mほどの高さを保っていることです。
本来は、高さ6mほどになると推定され、平地の前方後方墳は墳丘があっても2m程度のもの、というそれまでの常識を覆すこととなりました。また、後方部には2基の木槨墓、古墳の周辺には築造直前から6世紀頃までの建物跡や土器などの存在が明らかになり、平地に築かれた初期の前方後方墳の実態を如実に物語る希少な事例として、平成16年に滋賀県指定史跡となっています。

おすすめPoint

乎加(おか)神社
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乎加神社拝殿・本殿
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神郷亀塚古墳に葬られた人物は、古墳の西側に広がる中沢・斗西遺跡を拠点して当地域を掌握していたと考えられています。その中沢・斗西遺跡は、現在では住宅地となりその面影はありません。
JR能登川駅から東に向かってこの住宅街を突き抜けると、目の前が開けて畑地が広がります。そして式内社乎加(おか)神社の森の近くに鉄塔が一本。その右手にこんもりと見えるのが、神郷亀塚古墳です。
いよいよ墳丘に近づくと、前方部は幅3m程度・高さも1mにも満たない程度です。前方後方墳のイメージとはちょっと違うかも???と思いきや、これこそが亀塚の名前の由来だそうです。そう、こんもりした後方部が甲羅で、前方部がそこからのびる亀の首と頭。なるほど。言われてみればそう見えてきます。
もう一つ、その亀が見ているのが西南方向、つまり京の方向ということで「上り」亀と言い、反対方向を向く「下り」亀もあるそうです。あくまでも、地元に伝わる話ですので、史実云々は別にして、平地に築かれた数多くの古墳が千数百年にわたる農地開発・宅地開発によって消滅していった中で、今も その姿を地上にとどめているのは、この地が開墾してはいけない地=特別な地として認識し続けられているからであり、先の逸話もそんな先人の想いの一つといえるでしょう。

周辺のおすすめ情報

法堂寺廃寺礎石建物
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法堂寺廃寺塔心礎
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図書館・博物館・埋蔵文化財センター
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中沢・斗西遺跡の西側に隣接する法堂寺は、田んぼの中に高さ1.5mほどの塔心礎がポツンとあることが知られていました。平成8年から行われた発掘調査の結果、独特な文様を持つ瓦を葺いた塔や金堂などをそなえた白鳳時代の寺院=法堂寺廃寺であることが明らかになりました。中沢・斗西遺跡を治め、神郷亀塚古墳に葬られた一族の末裔が、法堂寺を建立したとも考えられています。平成10年には滋賀県指定史跡となり、平成11年には発掘調査成果に基づき中門跡・塔跡(心礎は本来あるべき姿に近い状態で展示されています)・金堂跡などを復元展示する「法堂寺遺跡公園」として整備され、古代のロマンに触れることができる場、そして憩いの場となっています。  東近江市の歴史についてもっと知りたい人は、東近江市立能登川図書館・能登川博物館・東近江市埋蔵文化財センター。これら施設の名称は別々ですが、同じ敷地内に廊下でつながっていますので便利ですよ。

アクセス

【神郷亀塚古墳】
・JR琵琶湖線能登川駅下車東口から徒歩約30分もしくは近江鉄道バス佐生停留所下車徒歩約10分 乎加神社からは案内看板あり
・名神高速道路八日市ICから約25分・乎加神社鳥居前駐車徒歩3分
【法堂寺遺跡公園】
・JR琵琶湖線能登川駅下車東口から徒歩15分
・名神高速道路八日市ICから約25分・駐車場(無料)・トイレ有り
【東近江市立能登川図書館・能登川博物館・東近江市埋蔵文化財センター】
・JR琵琶湖線能登川駅下車西口から徒歩約12分もしくはちょこっとバス図書館前下車すぐ


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(小竹森直子)

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