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新近江名所図会

新近江名所圖会 第89回 歩道下に残された縄文時代の貝塚 ―蛍谷貝塚

大津市
大津市蛍谷
蛍谷貝塚 一段高い歩道部分に貝塚が保存されています
蛍谷貝塚 一段高い歩道部分に貝塚が保存されています

瀬田川の右岸、国道422号を下った瀬田の唐橋と石山寺の間の山側に車道より50㎝程高くなった歩道部分があります。なぜ、この部分だけ高くなっているのか、その理由をご存知でしょうか。実はこの周辺は、縄文時代の貝塚が広がっていて、その貝塚を保存するために土が盛られているのです。ここは蛍谷貝塚と呼ばれ、この新近江名所図絵の第10回でご紹介した石山貝塚に続き、今から約6,300年前(縄文時代早期末から前期初頭)につくられた貝塚です。
昭和42年に滋賀県教育委員会による発掘調査が行われ、現状で保存されることになった結果、一段高くなった歩道です。さらに、昭和58~61年には滋賀県教育委員会と当協会による発掘調査(京阪石山寺駅の東側の瀬田川内)が行われています。現在はうっそうとした雑木林に覆われ、貝塚があるとは想像できない状況です。でも、貝塚の広がりは大きくありませんが、石山貝塚、上流の粟津貝塚とともに瀬田川沿いつくられた三大淡水産貝塚なのです。
また、うっそうとした雑木林とは対照的に、その北側にはコンクリートの固まりでできた現代の構造物が、伽藍山の谷筋に伸びています。これは大津放水路と呼ばれ、大津市南部を流れる8つの小河川を途中で連結迂回させ、放水路を通して瀬田川へ流す役割を持っています。これにより、下流の市街地を洪水から守ることができます。現在、一部ですが瀬田川~盛越川までの約2.4kmの工事が完了し、通水を開始しています。約6,300年前の貝塚と現代の最高水準の工事技術を駆使して造られた放水路が、隣接する不思議な空間です。

おすすめPoint

対岸から見た蛍谷貝塚 (左の山裾が蛍谷貝塚、右の橋梁が大津放水路)
対岸から見た蛍谷貝塚 (左の山裾が蛍谷貝塚、右の橋梁が大津放水路)

現地には白い案内標識があるだけですので、徒歩でないと見逃してしまいます。
京阪唐橋前から瀬田川沿いを下り、京阪石山寺駅を過ぎると大津放水路の橋梁を渡り切った山側に伽藍山公園の石碑があり、その一帯が蛍谷貝塚です。

周辺のおすすめ情報

木内石亭の石碑(右)
木内石亭の石碑(右)

周辺のおすすめスポットは、言うまでもなく近江八景に登場する「瀬田の唐橋」と「石山寺」です。
ちょっとマイナーなところで、大津放水路沿いに登ったところにある伽藍山公園はいかがでしょうか。公園には江戸時代に珍しい石や奇石を集め、「日本の考古学・鉱物学・博物館学の祖」「石の長者」と呼ばれた木内石亭(大津市坂本の生まれ)の石碑が建てられています。また、石山寺と伽藍山が一体となった景観は「石山の秋月」として近江八景のひとつに数えられています。

アクセス

【公共交通機関】京阪石山寺駅下車徒歩
【自家用車】名神高速道路瀬田西・東IC下車10分、国道1号松原国道口交差点から瀬田川沿いに下って10分、駐車場なし


より大きな地図で 新近江名所図会 第51~100回 を表示

(吉田 秀則)

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