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新近江名所図会

新近江名所圖会 第304回 源満仲所縁の伝説が残る地 大津市 御所の山 

大津市
写真1  源満仲祠跡碑   小倉重庸が元禄6年に建立したもの
写真1 源満仲祠跡碑   小倉重庸が元禄6年に建立したもの        

大津市、比叡山の麓。奥比叡ドライブウェイへ向かう途中、仰木の町に「御所の山」と呼ばれる場所があります。大津市無形民俗文化財である「仰木太鼓」の練習が行われる太鼓会館が建つこの地には、清和源氏発展の基礎を作った平安時代中期の武将、源満仲(みなもとのみつなか)が暮らしていたと伝えられています。
源満仲は、摂津多田から仰木の地に移り住み、比叡山横川の恵心僧都(えしんそうず)に帰依し、自らも出家したとされています。それから十余年を仰木で暮らしたのち、最晩年に、摂津多田へ戻ります。その時、仰木の人々は、大いに悲しんだと伝えられ、毎年5月3日に行われる「仰木祭」では「駒止め(うまどめ)」という行事がおこなわれます。3,4人ほどの男たちが肩を組んで、馬を走らせようとする満仲の前で、行く手を阻む事を繰り返します。これは、多田へ帰る満仲を引き留める姿を表したと言われています。
御所の山では1994年に発掘調査が行われ、沢山の遺物が出土しています。満仲の時代とは異なりますが、外国製の陶磁器が数多く発見されているのも特徴です。陶磁器は、中世では大変高価なもので、その中の「緑釉白地掻落牡丹唐草文梅瓶(りょくゆうしろじかきおとしぼたんからくさもんめいびん)」と呼ばれる緑色の鮮やかな陶磁器は、大津市指定文化財になっています。

写真2 御所の山頌徳碑 御所の山の歴史を物語る碑。裏面は仰木との関係が記される。昭和52年建立
写真2 御所の山頌徳碑 御所の山の歴史を物語る碑裏面は仰木との関係が記される。昭和52年建立  

大英博物館所蔵のものと同じ工房で作られたと考えられ、とても貴重な品物です。外国製の陶磁器が、一ヶ所に纏まって沢山見つかることは、この時期では殆ど例がないため、この場所は、大変有力な人物か、陶磁器を扱えるほどの富裕層の館跡だったのではないかと考えられています。

おすすめポイント
御所の山には、江戸時代、満仲の像や祠があったとされています。それらが荒廃したのを憂い、元禄6年に賀子内親王の命を受けた小倉重庸が、満仲の碑を建立しています。石碑は現在でも見ることができます。他にも地元の人々が満仲をたたえる碑や、歌碑が立てられています。
また、石碑の周辺からは、比叡山が一望でき、紅葉色づく山々や広がる棚田を見ることができます。仰木の町は、比叡山の中腹にあたる場所にあるので、山を見上げる景色も美しく、東の方に目を向ければ、広がる琵琶湖を眼下に一望することができます。

周辺のおすすめ情報
御所の山の隣に「わさいな~仰木」という地元野菜の直売所があります。わさいな~、とは仰木の方言で、来てくださいね、の意味で、野菜の他にも、パン屋やお惣菜、軽食も食べられるとのことです。

アクセス
【公共交通機関】JR湖西線堅田駅から江若バス「仰木小学校前」下車徒歩15分
【自家用車】湖西バイパス雄琴ICから、奥比叡ドライブウェイ方面へ

(上坂果穂)

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