記事を探す

新近江名所図会

新近江名所圖会 第308回 「かるた」だけではない近江神宮の見どころー大津市 時計館宝物館

大津市
写真1:漏刻
写真1  漏刻

近江神宮は大津市を南北に走る京阪電車石坂線の近江神宮前駅から徒歩5分ほどのところに所在する神社です。御祭神は第38代天智天皇で、天智6年(667)年に天皇が遷都した大津宮の推定地であるこの場所に昭和15年に創建されました。
小倉百人一首の巻頭に天智天皇の歌が選ばれていることから、この神社では「かるた」に関わる行事が年間を通じて行われています。毎年1月には名人位・クイーン位決定戦や全国競技かるた大会、かるた祭りが行われています。また、競技かるたをテーマにした漫画や映画の舞台になったこともあり、最近では「かるたの聖地」として訪れる人も多いようです。

◆おすすめPoint
今回紹介する「時計館宝物館」は「かるた」と同じく天智天皇に関わって境内に設けられた博物館で、大津宮が時刻制度発祥の地であることから昭和38年に開館しています。「日本書紀」には天智10年(671)4月25日に天皇が時間を測る漏刻(ろうこく)を造り、鐘鼓を鳴らして時間を知らせていたことが記されています。この日を現在の暦に換算した6月10日が「時の記念日」として制定されています。ただし、漏刻は天皇が皇太子であった斉明6年(660)に飛鳥の地で造ったことが記録されており、奈良県明日香村にある水落(みずおち)遺跡からは漏刻台と想定される遺構が見つかっています。時計の利用は大津宮よりも古くから始まっていたとみられますが、天皇の時代に時間の管理を始めるようになったと考えられるようです。
博物館の館内には、珍しい時計が数多く展示されています。櫓の形など特徴的なデザインをした和時計は、江戸時代から明治時代の初めにかけて国内で使用された時刻法に合わせた機構を持ったものです。季節によって長さに違いのある時間が正確に計れるようになっています。完全な状態で唯一現存する垂揺球儀と呼ばれる振子式天文時計や懐中時計なども展示してあり、ちょうど定時になると時間を知らせる時報が鳴り綺麗な音色を聞くことができます。
また、博物館の外にも日時計などを見ることができます。そのうちのひとつに、先の漏刻(写真1)があります。漏刻は三層に分かれた桝から漏れ落ちてくる水の量で時間を測る水時計です。最後の桝に溜まる水量に応じて設置された矢が浮き上がるようになっており、矢に刻まれた目盛りを読むことで時間が計れるようになっています。
「かるた」だけではない近江神宮の見どころとして訪れてみてはいかがでしょうか。

写真2:コーヒー豆焙煎工房
写真2:コーヒー豆焙煎工房

◆周辺のおすすめ情報
近江神宮の周辺にある遺跡のひとつに、大津宮と推定される錦織(にしこおり)遺跡があります。南側に広がる住宅街のなかには、重要な遺構が見つかった場所などが史跡として整備されています。このうちのひとつである第一地点は内裏南門とみられる遺構などが見つかった場所で、この遺跡を大津宮と推定するきっかけとなった重要な場所です。
この場所のすぐ隣に、コーヒー豆焙煎工房「UTANO COFFEE ROASTERY」(写真2)が昨年開店しました。店内に置かれた熱風式の焙煎機を使って、いろいろなコーヒー豆を焙煎して販売されています。注文してから焙煎してもらえるので、とっても新鮮なコーヒーを手に入れることができます。近江神宮や史跡の見学の際には、ぜひ訪れてみてください。

◆アクセス
【公共交通機関】京阪電車近江神宮駅から徒歩で5分
【自家用車】湖岸道路(浜大津から国道161号)利用 柳が﨑交差点左折(堅田方面からは右折)突当り

(中村智孝)

Page Top