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新近江名所図会

新近江名所圖會第239回 河川合流点のほとりの小さな神社-高島市鴨・志呂志神社

高島市
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志呂志神社遠景

高島市南部の大きな川鴨川とその北を流れる八田川が合流する地点のすぐ南側に小さな森があります。この森の中には神社があります。神社の名前は志呂志(しろし)神社といいます。すぐ南には高島市唯一の前方後円墳とされる鴨稲荷山古墳があります。
この神社は、その昔、川中島の白州に鎮座して所知食(しらすめ)天皇ゆえに志呂志の天皇と称して白洲の神社とも呼ばれているのが由来です。こうした川中島や川の合流点は太古より祭祀の場所として使われており、世界遺産の京都の下鴨神社(賀茂御祖神社)が高野川と鴨川の合流地点にあることは有名です。

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天皇橋から鴨川を望む

『高島郡誌』によると志呂志神社は、女神像と本地佛十一面観音の2体の御神体のうち女神像が、もともとあった藪ケ原(現在の北鴨)から平安時代後期頃に現在の位置に遷されたとされています。また、1187 年(文治3年)に源頼朝が10 貫文の社領を寄進しています。これに関連して、鴨川を挟んで北に位置する天神畑遺跡の発掘調査では、杏葉(ぎょうよう)型の轡(くつわ)が川跡から見つかっています。これは、当時の武将たちが戦勝祈願などの目的で馬具を志呂志神社に奉納したものの一部の可能性も考えられています。

おすすめPoint
平安時代後期の女神像や周辺の遺跡で出土した遺物(奉納品?)との関連も考えられる由緒ある神社であるにもかかわらず、境内は非常にひっそりとしています。鳥居をくぐると入母屋造の2間×2間の拝殿があり、その奥へと進むと一間社流造の1間×1間の本殿に至ります。本殿や拝殿も小振りですが、神社の境内を囲む木々と共に非日常的空間が広がると同時に何かほっこりとした気分にもなります。あるいは古い神社の景観を受け継いでいるのでしょうか。最大のおすすめポイントはこの空間にあります。

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志呂志神社本殿

この神社は平安時代中期の『延喜式』「神名式」に書かれた高島郡34座のうちの1座に比定されています。そして周辺には奈良時代から平安時代にかけての官衙と考えられる鴨遺跡や永田北遺跡、鴨川を挟んで北に位置する青井川周辺には奈良時代から平安時代にかけての人形代、馬形代、斎串を用いた祓いの場である上御殿遺跡などがあります。それらの存在は、式内社であることも含め、人々が仕事や生活をしていた当時の息吹を今に伝えているのかもしれません。

周辺のおすすめ情報
神社のすぐそばには鴨稲荷山古墳(名所圖會第125回)があり、北東約1kmには、神代文字碑のある安閑神社(名所図絵第81回)があります。また、高島市歴史民俗資料館や胞衣塚と呼ばれる円墳も徒歩数分の場所にあります。

アクセス
【公共交通機関】JR湖西線安曇川駅西口より南に約1.6km(徒歩約20分)。鴨川に架かる天皇橋を渡ると右側
【自家用車】京都方面からは湖西道路志賀ICから国道161号、鴨の交差点を左折して5分

(中村健二)

滋賀県高島市鴨

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