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新近江名所図会

新近江名所圖會第240回 近江商人発祥の地―蒲生郡日野町を訪ねて

日野町
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写真1:日野町歴史民俗資料館 近江日野商人館

近江商人とは、近江(現在の滋賀県)に本宅を置きながら、近江以外の土地で行商や店舗を構えて商売をしていた商人のことです。これらの商人は、出身地の地名から、八幡商人・湖東(五箇荘・愛知川)商人・日野商人・高島商人と呼ばれています。今回は、蒲生郡日野町にある日野商人発祥の地を訪ねて来ました。
日野商人の活躍は江戸時代初期に、安くて手触りのよい漆器椀(日野椀)を、埼玉・群馬・栃木などの農村や地方都市に行商したことから始まります。1712年(正徳二年)頃には、日野の中心部の大窪町だけでも380人ほどの商人が、商いを行っていた記録が残っており、漆器椀の大衆化に大きな役割を果たしていました。行商活動はその後、出店経営へと発展し、関東地方の米や麦といった農産物を原料とする酒・醤油・味噌・酢などの生産加工・販売のほかに、質屋や金貸業も兼業するようになりました。
こうした、日野商人の商業活動については、山中平右衛門の本宅(登録有形文化財・昭和14年建造)を活用した、「近江日野商人館(日野町歴史民俗資料館)」(写真1)で紹介しています。館内には、行商品であった日野椀、山中家の静岡の醸造店で商われていた日本最古級の国産のワイン(レプリカ)、子々孫々までもの繁栄を願って作成された山中平右衛門家の家訓(「慎み十か条」:1802年・享和2年作成)などが展示されています。

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写真2:日野まちかど感応館

おすすめポイント
「近江日野商人館」から、東側に15分ほど歩いた街道沿いには、観光案内や特産品の販売、休息所を設けた、「日野まちかど感応館」(写真2)があります。この建物は、江戸時代に日野椀に代わる商品である合薬「万病感応丸」(まんびょうかんのうがん)を製造した正野玄三が営んでいた薬店だった場所です。奥に復元された旧包装場(薬を梱包していた場所)では、薬業に関する資料を展示しています。

周辺のおすすめ情報
日野町内の菓子店では、名物として「いが饅頭」と「でっち羊羹」を販売しています。地元の方が手土産にされているようで、かなりの売れ行きでした。お昼頃に町内の2件の菓子店に行ってみましたが、いが饅頭のほうは、最後の一つが残っているのみでした。
いが饅頭(写真3:左)は、その形が栗の毬(いが)に似ていることから名づけられたお菓子で、漉し餡を団子生地で包んで、もち米をまぶしてあります。「でっち羊羹」(写真3:右)はでっちや行儀見習いの人が奉公先への土産にしたと伝えられるお菓子で、小豆餡と小麦粉を練り混ぜて竹の皮で包み、蒸しあげて作られています。どちらも控えめな甘さで、何個でも食べられます。

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写真3: いが饅頭とでっち羊羹

アクセス
【公共交通機関】近江鉄道日野駅下車、近江鉄道バス北畑口行バス乗車
近江日野商人館へは「大窪」下車、徒歩3分
日野まちかど感応館へは「西の宮」下車、徒歩1分
近江日野商人ふるさと館へは「向町」下車、徒歩2分
【自家用車】名神八日市I.C.から車で20分もしくは名神竜王I.C.から車で25分

(田中 咲子)

◎日野町歴史民俗資料館 近江日野商人館
開館時間―午前9時~午後4時
休館日―毎週月・火曜日(祝日の場合は翌日が休館)、年末年始(12月29日~1月4日)
入館料―大人:300円、小・中学生120円
連絡先―TEL:0748‐52‐0007
駐車場―有り
◎日野まちかど感応館
開館時間―午前9時~午後5時
休館日―毎週月曜日(祝日の場合は翌日が休館)、年末年始(12月29日~1月4日)
入館料―無料
連絡先―TEL:0748‐52‐6577
駐車場―有り

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