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新近江名所図会

新近江名所圖會第241回 長浜に残る近代建築-旧長浜駅舎-

長浜市
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現在のJR長浜駅

JR長浜駅を外から眺めると、2006年に建てられた現代建築にもかかわらずどこかレトロな雰囲気を漂わせています。これは同年の敦賀駅までの直流化にあわせて建て替えられた新駅舎ですが、初代の長浜駅舎を模してつくられたため近代建築の趣きがみられるのです。
1872年(明治5年)、日本最初の鉄道として新橋~横浜間が開通したことは鉄道マニアの方でなくとも知っておられることと思います。その10年後の1882年(明治15年)、長浜~敦賀間(柳ケ瀬トンネルの両側部分、全線開通は2年後の1884年)が開通します。国内の鉄道では7番目の開業となります。そして翌1883年(明治16年)には長浜~関ヶ原間が開通します。長浜駅を起点に北陸方面と東海方面へと鉄道が延びていきます。その一方で、京阪神地域と結ぶ路線は大津までしかきておらず、大津~長浜間は1889年(明治22年)の鉄道敷設までは琵琶湖上を汽船で連絡していたのです。そのような事情もあり、長浜駅は琵琶湖に面した場所につくられました。陸上交通と湖上交通の接点に設けられた交通施設というのが、いかにも滋賀県らしいありかたではありませんか。

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旧長浜駅舎

この旧長浜駅舎ですが、現在の長浜駅の南側に往事の姿をとどめ保存されています。現存する鉄道の駅舎としては日本最古となり、「鉄道記念物」や「県指定有形文化財」にも指定されています。駅舎自体は、東西24.5m、南北9.7m、2階建て木骨構造の石灰コンクリート造りで、建物の四隅には切石を積み、出入口と窓枠・煙突にはレンガを使用しています。駅舎内には駅長室や待合室があり、内装も鹿鳴館調の凝ったつくりとなっています。

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旧駅舎の駅長室

おすすめポイント
この旧駅舎に隣接して、長浜鉄道文化館と北陸線電化記念館という2つの施設があり、これら3つの施設をあわせ長浜鉄道スクエアとして公開されています。長浜鉄道文化館は、長浜の鉄道文化を伝える資料館で、長浜駅の鉄道史の紹介や鉄道連絡船に関する資料、北陸線を走った鉄道の模型車両を展示しているほか、HOゲージの鉄道模型運転コーナーも併設されています。北陸線電化記念館はかつて北陸線で使用されたED70形交流電気機関車とD51形793号蒸気機関車を並べて展示しています。また、北陸線電化記念館には展望デッキが設けられており、北陸線を走る列車を間近で見ることもできます。

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北陸線電化記念館

周辺のおすすめ情報
ここでもう1つ長浜の近代建築を紹介します。長浜駅にほど近い湖岸縁に安土桃山時代に羽柴秀吉が築いた長浜城がかつてありました。現在その跡地は豊公園として市民の憩いの場になっているとともに、多くの観光客でにぎわっています。その公園内に1棟の四阿(あずまや)があります。よく目にする公園の四阿とは異なり、どこかモダンな感じを醸し出しています。この四阿に取り付けられた説明版によると、1918年(大正7年)に市内に開設されたスポーツ公園に設置されたもので、昭和初期に現在の地に移設されたということです。このような歴史ある四阿ですが、現在でも普通に休憩場所として機能しています。私も近くで発掘調査をしていた時に、ここでお昼のお弁当をひろげたりもしました。(内田保之)

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豊公園内の四阿

アクセス
【公共交通機関】旧長浜駅舎はJR長浜駅西口より徒歩3分、豊公園はJR長浜駅西口より徒歩5分
【自家用車】県道2号大津能登川長浜線(湖岸道路)公園町南交差点すぐ。豊公園駐車場(有料)を利用すると便利。

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