記事を探す

新近江名所図会

新近江名所圖會 第281回 発掘調査から80余年、学史に輝く重要古墳 ―安土瓢箪山古墳―

近江八幡市

皆さんは日本で最大の墳丘をもつ古墳をご存知でしょうか?

そう、大阪府堺市にある前方後円墳の大仙古墳です。墳丘規模は、これまで全長486mとされてきましたが、最近の研究で、さらに大きいことが指摘されています。歴史の教科書で取り上げられることも多く、近年は、日本が来年の世界文化遺産登録を目指している百舌鳥・古市古墳群中の古墳ということで、ご存知の方も多いことと思います。

それでは、滋賀県で最大の墳丘をもつ古墳は?

この問いについては、答えにつまってしまう方も多いのではないでしょうか。その答えが今回紹介する安土瓢箪山古墳です(全長136m)。

安土瓢箪山古墳は、近江八幡市安土町宮津にあります。1936年に発掘調査され、1938年に報告書が刊行されています。報告書が刊行されてから今年でちょうど80年ですが、今も滋賀県を代表する前期古墳として重要な位置を占めています。

安土城瓢箪山古墳案内板
安土瓢箪山古墳案内板

また、古墳の研究史上も重要な位置を占めており、例えば、当古墳の発掘調査にも参加し、のちに古墳時代の研究に大きな足跡を残した考古学者の小林行雄氏は、当古墳の調査成果をもとに古墳の埋葬施設の変遷にかかる通説をくつがえす重要な研究成果を発表しています。

なお、古墳の出土遺物は、現在、京都大学総合博物館で保管されています。

◆おすすめポイント

この古墳の見どころは、やはりその大きさです。竹や草木が繁茂していてわかりにくいかもしれませんが、墳丘に登って端から端まで歩けば、その雄大さを実感できるでしょう。

陵墓として立ち入りが制限されている大仙古墳なんかより(ごめんなさい)、よっぽど身近な存在の安土瓢箪山古墳にぜひ一度足を運んでみてください。ただし、まだ暖かいこの時期の見学はおすすめしません。私も先日、現地に行きましたが、藪蚊が多く、大変な目に遭いました。涼しい時期にぜひお運びください。

安土瓢箪山古墳②
安土瓢箪山古墳②
安土瓢箪山古墳①
安土瓢箪山古墳①

◆周辺のおすすめポイント

安土瓢箪山古墳を訪れるなら、滋賀県立安土城考古博物館も併せて見学することをおすすめします。学史的に重要な安土瓢箪山古墳の石室は、埋め戻されていて現地で実物を見ることはできませんが、同館には、安土瓢箪山古墳の石室レプリカが展示されており、副葬品の出土状況など石室内の様子を知ることができます。

ここには、同じく滋賀県の代表的な前期古墳である雪野山古墳も特集展示されていますので、これと比較しながら観ることで、いっそう理解が深まると思います。両者の規模の違いや立地の違い、副葬品の違いなどは何を物語っているのか、いろいろと考えながら観ると、おもしろいと思います。わからないことや詳しく知りたいことは、博物館で学芸員に気軽に尋ねてみてください。

◆アクセス
公共交通:JR琵琶湖線「安土駅」より徒歩25分。レンタサイクル10分。
自家用車:名神高速道路竜王I.Cまたは八日市I.Cより車で30分。

宮村誠二

Page Top