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新近江名所図会

新近江名所圖會 第363回 山間の田んぼの中に黒い物体が・・・―檜尾神社の黒鳥居―

甲賀市
写真1 田んぼの中の黒鳥居
写真1 田んぼの中の黒鳥居

三重県伊賀市と滋賀県甲賀市甲南(こうなん)町のあたりは、小さな丘陵の谷間を縦横無尽に通る道がたくさんあり、自転車やオートバイでお散歩するのがとても楽しいところです。どこが県境か分かり難く、気が付けば三重県を走っていたり、気が付けば滋賀県に戻っていたりします。この細道はどこにいくのだろうと入り込めば、人家の庭先に出てしまうことなど、山間地「あるある」なこともしばしば。走るときは気を付けねばなりません。
そんな調子で晴天の中走っていたら、田んぼの中に大きな黒い物体が…。(写真1)よく見れば鳥居なのですが、かなり背が低い。しかも黒い。調べてみると、通称「黒鳥居」と呼ばれているようで、ネットサービスのマップにも示されています。湖岸にある「あのベンチ」のような、”ばえる”スポットではないのですが、知ってるヒトは知っている、面白いスポットのようです。

おすすめPoint
さてこの黒い鳥居の正体はというと、黒鳥居から約400m西にある、檜尾(ひのお)神社の古い鳥居のようです。黒いのにも驚きますが、脚が短く低いのも驚きです。焼けたのか下半分が朽ちたのかは分かりませんが、田んぼの中に黒い鳥居があるのは、なんとも異様な光景です。

写真2 檜尾神社の鳥居と参道
写真2 檜尾神社の鳥居と参道
写真3 檜尾神社
写真3 檜尾神社

檜尾神社(写真2・3)は、戦国期の武将の池田氏に厚く崇敬され、本殿の改築や修繕などが行われています。現在の社殿は宝永3年(1706年)に再建されたもので、三間社流造(さんげんしゃながれづくり)の代表として、県有形文化財として指定されています。
社伝によれば、天津彦彦火瓊々杵尊(アマツヒコヒコホノニニギノミコト)がこの辺りにあった滝池に降り立ち、青龍となって雲中に現れ、炎の尾を垂れたことから、「火尾」として祭りました。しかし、たびたび火災が起きたために「檜尾」と改めたところ、火災が起こらなくなったといわれています。瓊々杵尊(ニニギノミコト)といえば、『古事記』・『日本書紀』に登場する神の1人で、天孫降臨の説話に登場することで知られています。天孫降臨の際に、稲作を地上にもたらした、農業の神とされることがあります。この地の開発に深く関わる神社であり、青龍の炎で焼けたことを想像させる黒鳥居(写真4)は、田んぼの中にたたずみながら、この地を見守っているのかもしれません。

写真4 黒鳥居から檜尾神社を望む
写真4 黒鳥居から檜尾神社を望む

周辺のおすすめ情報
この辺りは「甲賀忍者」で知られる甲賀武士の城跡や館跡が多く見られる地域です。有名どころでは、江戸時代編纂の忍術秘伝書の一つが伝わる大原氏の邸宅はJR甲賀駅から南南東に約11分ほどのところにあります。高い土塁に囲まれ、甲賀武士の居館の姿を今に伝えています。(詳しくは「新近江名所圖会第31回」参照) ただし、甲賀の城館跡は個人宅として今も住んでおられる所や、すぐ近接して民家があることも多いので、見学の際にはご迷惑にならぬようくれぐれもご注意ください。

(重田勉)

アクセス
【公共交通機関】JR草津線甲賀駅から西方向、徒歩約10分
【自家用車】新名神甲南ICより約10分

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