記事を探す

新近江名所図会

新近江名所圖會 第431回 身近な国の重要文化財─鉄オタ必見!「第一大戸川橋梁」

甲賀市

 信楽高原鐡道(SKR)の玉桂寺前駅から歩くこと約3分、「第一大戸川橋梁」は、鉄道ファンなら見逃せない(見逃してはならない)スポットの一つです。というのも、長さ31mのコンクリート製のこの橋が、驚くなかれ、国の重要文化財!この情報、知っている人は意外と少ない?![令和3(2021)年8月2日指定]

 昭和28(1953)年、旧国鉄信楽線(現SKR)の旧橋が豪雨で流失し、翌29(1954)年に当時の先端技術を駆使して建設されたのが、このプレストレストコンクリート造の単桁(たんけた)橋です(画像1・2)。

画像1
画像2

 プレストレストコンクリートは、コンクリート内部に仕込んだ高強度な鋼材に、あらかじめ(プレ)圧縮する力(ストレス)を与えることで、大きな引っ張る力が作用してもひび割れを制御することができます(註1)。高強度を保つことにより橋脚が不要となり、川の増水にも備えることができるってことですね。

 建設にあたっては、フランス人技師が設計を行い、国鉄大阪工事事務所次長であった仁杉巌(にすぎいわお・1915~2015)を中心に建設が進められました。仁杉氏は、その後新幹線建設に携わり、第9代国鉄総裁に就いた人物です。今回の重文指定の際には、工事の克明な記録が残されていたことも評価されており、これは何やら巷で噂のドキュメンタリー番組が作れそうな気がします(プロジェクト□的な?!)。

 プレストレストコンクリートを使った橋は、1951年(昭和26年)に日本で初めて石川県七尾市の長生橋(11.6m)に建設されていますが、30mを超える長さでかつ鉄道が通る第一大戸川橋梁の建設は、橋梁技術に革新を起こし、その後のコンクリート研究の発展に大きな影響を与えたとされます。これも重要文化財に指定された大きな理由の一つです。

 橋のすぐそばには、本体と同一断面同一材料で制作された標準桁(ひょうじゅんけた)も設置されていて、これにより経年劣化の具合も検証することができるのだそうです(画像3)。ナルホド、これも重要文化財!

画像3

 地域の人々の交通手段を足元から支える第一大戸川橋梁(と標準桁)。まだまだ現役で頑張ってほしい、信楽の、滋賀の、日本の、宝です(画像4)。

画像4

【近くのおすすめポイント】

 重文の橋だけ撮っても何だかな~やっぱり信楽高原鐡道が通った時に写真撮りたいよな~・・・現地に行くと必ずそんな“欲”が出ます(笑)。日中の時刻表は上下線で1時間に各1本!シャッターチャンスは少ない!ということで、時間をうま~く調整して、近くの玉桂寺(ぎょくけいじ)にご参拝♪ 

 玉桂寺は、「信楽のこうぼうさん」として親しまれる高野山真言宗の寺院で、ぼけ封じ近畿十楽観音霊場第五番札所にもなっています(画像5)。

画像5

 おやおや?こちらの方が気になりますか??

 ご本尊は厄除け弘法大師像、本堂から地下道(!)へ抜けると足腰神経痛除けの薬師如来さま、護摩堂には不動明王にぼけ封じの観音さまなど、ぜひご利益をお授けいただきたい(!?)ほとけさま達がいらっしゃいます(画像6)。そして阿弥陀堂には、「まさかここで会えるとは!」と驚いた、もじゃもじゃアフロヘアのほとけさまも・・・!

画像6

 境内には、高さ13mの一願成就第不動明王像や、子宝祈願の股木杉、弘法大師が植えたと伝わると立派な高野槙(滋賀県指定天然記念物)や、大師ゆかりの三鈷の松(持っていると幸せが訪れる、財布に入れておくと金運に恵まれると言われている)などなど、心安らぐスポットがいっぱいです♪。まもなく紅葉の季節、一度訪れてみてはいかがでしょうか(画像7)。

画像7

【アクセス】

信楽高原鐵道「玉桂寺前駅」下車、徒歩約3分

註1 ピーエス・コンストラクション株式会社webサイト参照

★★★ ご案内 ★★★

 滋賀県立安土城考古博物館では、ただいま令和7年度秋季特別展 安土城築城450年記念「天下人の城 安土城」を開催中(2025年11月16日(日)まで)。天下人となった信長が建てた城は、どのようなものだったのか?残された資料や、発掘調査の成果、築城に関わった人々の残した作品や資料などから、在りし日の姿をご紹介しています。ぜひお運びください。詳しくは【コチラ】

Page Top