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新近江名所図会

新近江名所圖絵第209回 現代の武士が活躍する城-高島市清水山城跡-

高島市
写真1 畝状空堀群
写真1 畝状空堀群
写真2 主郭の礎石建物
写真2 主郭の礎石建物
写真3 堀切体験
写真3 堀切体験
写真4 七川祭りの流鏑馬
写真4 七川祭りの流鏑馬

今回は高島市新旭町熊野本・安井川にある清水山城についてご紹介したいと思います。
高島の地では、嘉禎元年(1235)に佐々木高信が田中郷の地頭となり、鎌倉~戦国時代末にかけてその一族である「高島七頭」が活躍しました。清水山城は、この「高島七頭」のなかの惣領家である越中氏の居城と考えられています。
この遺跡は保存状態が良く、我が国の中世の在地土豪の城館を考える上で重要である点が評価され、平成16年(2004)に「清水山城館跡」として国史跡に指定されました。
さて、清水山城は「放射状連郭式」と呼ばれる構造で、主郭を中心に3方向に延びる尾根上に曲輪(くるわ)が配置されています。各曲輪の周辺には、近江では珍しい畝状空堀群(写真1)をはじめ、堀切などの城郭施設が数多く残り、天台寺院清水寺の寺坊跡を利用したと推測される家臣の屋敷地も確認されています。また、主郭などでは発掘調査も行われており、城主の御殿と考えられる礎石建物(写真2)などが見つかっています。

◆おすすめポイント
みどころづくしの清水山城ですが、この城では現代の武士(もののふ)たちが活躍しています。
「もののふ」といっても、猛々しい荒武者が出没するというわけのではなく、「清水山城楽クラブ」という地元の方々を中心に結成された市民グループです。この「清水山城楽クラブ」は、『子どももおとなも山遊び/清水山城で~楽・知・遊~』を活動テーマに、保全や活用の方法を検討しながら、自らが楽しみながら活動されていることが大きなポイントです。
これまで、樹木の整理・下草刈り・落ち葉かきなどの史跡保全を行いつつ、模擬櫓づくりやベンチ・テーブルづくり、戦国山城体験プログラム“イクササイズ”(堀切体験・模擬落石体験・松ぼっくりでいくさ体験・弓矢体験)など、じつに多くの活動が実施されています(写真3)。
また、昨今の歴女ブームとうまくコラボし、歴女の方々の創作された「佐々木七獣士」などのマスコットキャラクターも誕生し、最近では県外の方々も活動に参加されているようです。基本的に月に1度の活動ですが、私も創会当初の会員のひとりなのですけれども、ここ最近は幽霊会員と化しています。会員の皆さんゴメンナサイ・・・。
「清水山城楽クラブ」の活動のように、現代を生きる我々が自由な発想で楽しむことが、文化財に対する愛着や次世代への継承を育む基盤となることを強く感じています。

◆周辺のおすすめ情報
清水山城の周辺には多くの観光スポットがあります。清水山城南西山麓には「大荒比古神社」があり、毎年5月4日に七川祭が行われます。この日に奉納される「奴振り」は滋賀県無形民俗文化財に指定されており、神社の参道の両脇に設置された観客席の間を駆け上がって的を射抜く「流鏑馬」の迫力は必見です(写真4)。また、清水山城近隣の今市地区・辻沢地区では、それぞれ5月3日と5月5日に七川祭の子ども版といえる竹馬祭が行われています。なお、「大荒比古神社」の小さな谷を挟んだ東側には寺坊跡を屋敷地としたと推測される「井ノ口館(本堂谷遺跡)」には土塁などの遺構が残っていて、往時の隆盛を伝えています。
(小林裕季)
●所 在 地:高島市新旭町熊野本・安井川
●アクセス:JR湖西線新旭駅から山麓の新旭森林スポーツ公園まで徒歩約15分
新旭森林スポーツ公園から清水山城主郭まで徒歩約30分

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