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新近江名所図会

新近江名所圖会 第45回 名所に囲まれた湖底の縄文遺跡―粟津湖底遺跡とその周辺

大津市
大津市粟津

 ご好評いただいている「近江新名所図絵」。平成22年度のフィナーレを飾るのは、近江随一の名所に囲まれた縄文遺跡――粟津湖底遺跡です。
粟津湖底遺跡の始まりは、約10,000年前の縄文時代早期初頭。寒い氷河期が終わり、針葉樹の林は木の実がたわわに実る落葉樹の森へと生まれ変わった頃です。大量の木の実は、良質なデンプン質として人類の食料資源となり、人口の爆発的増加を促しました。
粟津湖底遺跡の調査では、実際に10,000年前のクリ塚や、ほぼ同じ時期の貝塚の存在もうかがい知ることができました。これらの遺構は、縄文人がクリやセタシジミの食べかすを捨てた跡。たかがゴミ捨て場に見えるかも知れませんが、人類史上が初めて定住生活を採用した頃の貴重な暮らしの証拠です。その詳しい紹介は、当協会が刊行した『シリーズ近江の文化財004 縄文人のエコロジーとエコノミー』にありますから、ぜひご覧ください。

おすすめPoint

 その名の通り、遺跡自体は琵琶湖の底に眠っているので全く見えませんが、この遺跡の魅力の1つは、「近江八景」のうちの四つの名所に囲まれていること。近江八景とは、近世琵琶湖の絶景ベスト8のようなもの。①石山秋月(石山寺)、②勢多夕照(瀬田の唐橋)、③粟津晴嵐(粟津原)、④矢橋帰帆(矢橋)、⑤三井晩鐘(三井寺=園城寺)、⑥唐崎夜雨(唐崎神社)、⑦堅田落雁(浮御堂)、⑧比良暮雪(比良山系)で構成されています。浮世絵師・歌川広重の錦絵でも有名ですね。粟津湖底遺跡の位置は①~④の真ん中、まさに「名所中の名所」。近江随一の名所群にある縄文遺跡といえるでしょう。

周辺のおすすめ情報

ここでは春の日の午後の散策コースをご提案します。石山寺(上記①)を起点にしますが、この地点の詳細は「新近江名所図絵」の第10回をご覧ください。門前の桜も楽しんだ後、北に1.5㎞進むと、唐橋(上記②)です。これを渡ってすぐに左折、さらに北へ1.7㎞進むと、琵琶湖漕艇場やアヤハディオ瀬田店さんに到着。その前に広がる琵琶湖の底が「粟津湖底遺跡」で、その対岸が粟津晴嵐の地です(上記③)。
さらに1.5㎞北上しますと、イオンモール草津店さんが見えて参ります。屋上の駐車場西端には素敵な展望台があり、新緑に萌える矢橋の人工帰帆島(上記④)や、西から北西にかけては夕日に映える上記の名所⑤~⑧の遠景が一望できます。景色を楽しんだ後は、モール内で喫茶やお食事、ショッピングを楽しみ、バスで一路JR瀬田駅へ。
以上が、徒歩で約4kmの散策コース。カメラは是非ご持参ください。春の近江八景を楽しみつつ、粟津縄文人が見た原風景を想像されてはいかがでしょうか。

アクセス

【公共交通機関】JR琵琶湖線石山駅から京阪電車石坂線に乗り換え石山寺駅下車、徒歩10分。バスはJR琵琶湖線石山駅から京阪バス石山団地・新浜・大石・南郷二丁目東行きで約15分、石山寺山門前下車
【車】 名神高速道路瀬田西IC下車10分・瀬田東IC下車15分、石山寺前の有料駐車場を利用


より大きな地図で 新近江名所図絵 第1回~第50回 を表示

(瀬口眞司)

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