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整備された天狗前7号墳

新近江名所図会

新近江名所圖会 第139回 渡来系の古墳-天狗前古墳群-

東近江市

(東近江市横山町)

整備された天狗前7号墳
整備された天狗前7号墳

近江八幡市・東近江市・竜王町にまたがる雪野山の山頂付近には未盗掘の石室が見つかった雪野山古墳があります。山腹から山麓には総数200基以上を数える後期古墳が、存在しています。第19回ではその中の八幡社古墳群について紹介されていますので、そちらも参照してください。今回は、これら古墳群のなかでも渡来系の石室がみつかった天狗前(てんぐまえ)古墳群について紹介したいと思います。
天狗前古墳群は、雪野山の南端からのびる細長い丘陵上に営まれた古墳時代後期の古墳群で、昭和37年(1962)に名神高速道路の建設にともなって6基の発掘調査が行われ、その後も平成2年に公園の整備にともなって2基の発掘調査が行われました。大半の古墳は消滅してしまって現在はみることはできませんが、平成2年に調査された2基については、公園内に整備された状態でみることができます。

天狗前7号墳石室
天狗前7号墳石室

このうち、7号墳と名付けられた直径約20mの円墳は、羡道(せんどう)と玄室(げんしつ)の境が階段状となる特徴をもっています。もう1基の10号墳も、上部が失われていたものの、7号墳と同じ構造の石室があったと推定されています。これらの特徴的な石室は、滋賀県内でも湖東地域に多く分布していて、渡来系氏族特有の石室構造と考えられています。副葬された土器の特徴から、7号墳は6世紀後半に、10号墳は6世紀中頃に、それぞれ築造されたようです。

おすすめPoint

天狗前古墳群からほど近い東近江市木村町に、蛭子田(えびすだ)遺跡があります。平成22年度(2010)の発掘調査で、徳利形平底壺(とっくりがたひらぞこつぼ)という須恵器が見つかりました。古墳時代後期のもので、滋賀県内では蛭子田遺跡が12例目となります。渡来人に関係する土器の1つとされていて、蛭子田遺跡と天狗前古墳群の関係も注目されます。なお、蛭子田遺跡の遺物は、現在報告書の刊行に向けて鋭意整理調査中ですが、その様子は滋賀県立安土城考古博物館の中庭回廊から見学することができます。

周辺のおすすめ情報

定石古墳群
定石古墳群
平石1号墳
平石1号墳

天狗前古墳群と谷を挟んだ反対側の山麓には、定石古墳群があります。地元の方々によって周囲の竹も伐採され、また看板も立てられているため、とても見学しやすくなっています。
また、定石古墳群から北へ向かって少し歩いたところには、平石古墳群があります。道路に向かって石室が開口した古墳の脇には「史蹟平石古墳群」の石碑も建てられています。雪野山の周囲をぐるりとまわるだけで多くの古墳に出会うことができますよ。

アクセス

【公共交通】近江八幡駅南口より近江鉄道バス「北畑口」もしくは「長峰集会場」行き「北部工業団地前」下車徒歩30分
【自家用車】名神高速道路竜王ICから東へ20分


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参考資料

蒲生町教育委員会(1992)『町内遺跡発掘調査報告書Ⅲ』
蒲生町(1995)『蒲生町史』第1巻

(内田保之)

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