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オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.26 現場の必需品-移植ゴテ-

その他

発掘調査では大小様々な道具を使用します。大きな道具はパワーショベルや高所作業車、小さな道具は竹ベラや竹串まで、遺跡を発掘し、正確に記録するために各工程において様々な道具を使い分け、駆使します。
最も重要な位置を占める工程は、遺構を検出し、検出した遺構を正確に掘り込み、あるいは掘り残す作業であり、遺構に残る遺物を傷つけることなく検出し、掘り出す作業です。当然この工程には、遺構を検出した状況、掘り込んだ状況、遺物の出土状況などを作図や写真撮影により正確に記録する作業が加わります。この発掘作業工程において最も活躍し、欠くことのできない道具の一つが園芸用移植ゴテです。そのためどこの発掘現場にも必ず移植ゴテが備えられています。
ホームセンターに行けば、様々な素材の園芸用移植ゴテが並んでいます。素材もプラスチック製、スチール製、ステンレス製と色々あります。私は、柄から刃先までが一体型の刃の内側に目盛りが付いたオールステンレス製の移植ゴテを愛用しています。
現場ではこの移植ゴテで、遺構を掘り、掘った土を掬う作業に使うだけでなく、遺構を検出する際には地面を「削る」、検出した遺構に「線を引く」、土層を観察し記録する際には壁面を「削る」とともに土層ごとに「線を引く」などの作業にも利用します。そのため、仕事がしやすいように既成のままではなく、刃先をグラインダー(研磨するための道具)で研いで鋭利に仕上げたり、狭いところから土を掘り出し易いよう曲げて刃先の角度を調節したりしています。だから、写真のように様々な形に変化しています。また、遺構の深さや遺構内に何か埋もれていないかを確認する際には「突き刺し」てみることもあります。さらに、記録写真を撮影する際には、撮影する遺構や遺物の大きさを理解しやすくするために一緒に写し込んでスケールの代用品として利用することもあります。

様々な形にアレンジした移植ゴテ (左端が元の形)
様々な形にアレンジした移植ゴテ (左端が元の形)

園芸用移植ゴテは、発掘調査を正確に行うためには、欠くことのできない道具なのです。まさに小さな逸品です。そして私にとっては、オールステンレス製移植ゴテは万能の道具であり、現場での最高の友人であり相棒です。

(藤崎高志)

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