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オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.92 基礎資料の一つ-国土基本図-

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発掘調査や報告書作成の過程で様々な種類の地形図を利用しますが、使用される頻度の高さでは2,500分の1国土基本図が一番ではないでしょうか。国土地理院が測量して作成する地図のうち、2,500分の1または5,000分の1スケールで作成した大縮尺図を「国土基本図」と呼びます。都道府県や市町村においても、国土地理院の図式に準拠した地図を「都市計画図」という名で作成している場合があります。
国土基本図の最大の特徴は、地図に記された詳細な情報だといえるでしょう。図1は25,000分の1、図2は同じ範囲の2,500分の1地形図です。いずれも旧膳所城の範囲になりますが、25,000分の1地形図では、縮尺の都合で図式に従った記載情報の省略や誇張が行われていますが、2,500分の1地形図では道路や建物の姿が正確に記されていることがわかります(図1は調査員のおすすめの逸品No.44「二万分の一地形図」にも登場していますので、そちらも参照してください)。

25000分の1地形図「瀬田」より 平成11年
図1 25000分の1地形図「瀬田」より 平成11年
大津市市域図より 平成21年
図2 大津市市域図より 平成21年

この地図は、発掘調査地区を書き込んで調査地位置図を作成したり、等高線を抽出して微地形図を作製したりするなど、様々な用途に応用できる資料です。個人的には、近世の絵図情報を現代の地図に移して復元作業を行う、手ごろな縮尺の地形図として重宝しています。私にとって作業に欠くことのできない逸品といえるでしょう。

おまけ~3,000分の1都市計画図~

大津市街図より 昭和41~43年頃
図3 大津市街図より 昭和41~43年頃

国土基本図は昭和35年(1960)から整備された大縮尺地形図ですが、これ以前にも大都市では都市を把握する必要から大縮尺地形図が作成されていました。その一つに3,000分の1都市計画図があります。これは、大正8年(1919)に成立した旧都市計画法に基づいて、京都や横浜などの大都市で都市計画作成の基礎資料として整備されました。太平洋戦争が終結して日本が主権を回復した昭和27年以降は、地方都市の都市計画基本資料として3,000分の1地形図が作成されています。ところが2,500分の1国土基本図が整備されると、縮尺の異なる3,000分の1地形図は使われなくなってしまったのです。
しかしながら、高度経済成長によって国土が変容する以前の情報が記された3,000分の1地形図は、20,000分の1地形図(調査員のおすすめの逸品No.44)や古い時期の空中写真(同No.13)と同様に、著しく変容した昔の景観を知る貴重な史料といえるでしょう。図3の3,000分の1地形図は図2とほぼ同じ範囲です。本丸の曲輪や住宅団地が建つ前の二の丸を、明瞭に確認することができます。

(神保忠宏)

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