オススメの逸品
調査員オススメの逸品 第188回 遺跡の記録写真の革命-ドローン
滋賀県文化財協会の職員が行う多くの発掘調査は、開発事業により遺跡が壊されることを前提とした記録保存調査です。当然、同じ調査を2度とできないため、記録は最善のものを残すよう日々努力しています。特に、一目で遺跡の内容がわかる遺構写真の撮影には、誰もが心血を注いでいます。
広い現場の場合、通常、低いアングルで撮影するよりも高い位置から撮影した方が、より多くの情報を写し込んだ写真となります。そのため、調査員はより高い位置から撮影できる方法を模索してきました。例えば、調査員のおすすめの逸品第77回で取り上げたローリングタワーから、より高い位置で撮影できる高所作業車への進化を取り上げました。
そして、今回はその飽くなき探求が到達した逸品を紹介します。それは、首相官邸の屋根に落ちていたり、国宝姫路城天守にぶつけて文化財保護法違反で操縦者が逮捕されたりと、何かと物議を醸し出しているあのドローンです。
高所作業車も便利なのですが、なにぶん大きな車体のため、進入路がないと調査区の近くに寄りつけることができない、高さ40mほどと限界がある、ブーム(人を乗せた台と車体を繋ぐ棒状の部分)の長さに限界があるため、現場の真ん中にある遺構は真上から撮影できないなどの欠点がありました。
でも、ドローンは違います。ドローンにデジタルカメラを搭載すれば、調査地周辺の地形に制約されず撮影が可能なうえ、最高150m上空からの撮影ができるなど、最適なポイントからの撮影が可能となりました。
たとえば、堤ヶ谷遺跡(平成26年度調査)では丘の上に造られた2,000年前頃(弥生時代中期)の村跡がみつかりました。
丘の中腹でみつかった竪穴住居の撮影は、これまでの方法ではかなり難しく頭を悩ますものでした。住居の周囲は急斜面のため、安全にローリングタワーを建てられる場所がありません。また、高所作業車も調査地の遙か下を通る道までしか入ることができないため、撮影には不向きでした。そこで登場したのがドローンを使った撮影です。地形の制約がないため、住居の特徴を最もよく残す部分アングルの撮影ができました。
また、ビデオを搭載すれば動画で調査地全体の様子を記録することもできます。ドローンは考古学の分野においても新たな革新を起こしつつあります。(北原 治)