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調査員のおすすめの逸品 №323 手に入れた空からの視点―小型無人機(ドローン)―

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画像1 小型無人機(ドローン)
画像1 小型無人機(ドローン)

遺跡を空から撮影して調査することは、古くから行われていました。


 日本では、1926年に千葉県姥山(うばやま)貝塚の発掘に際して、高度1000mから撮影された空中写真から遺跡の判読に使用されたのが最初と言われています【註1】。
 太平洋戦争後は、空中写真撮影の発達にともなって、航空機による遺跡の範囲確認や測量が行われるようになりました。使用する航空機も、セスナやヘリコプターなどの有人機や、ラジコン機などの無人機など種類が増え、撮影も比較的簡単になってきました。
 しかし、有人機は飛行準備に時間がかかるため、すぐに撮影したい時に間に合わないことがあります。また、ラジコン機も操縦や撮影に経験が必要なことから、簡単に空中写真を撮影することはできませんでした。
 ところが近年、高性能な小型無人機(ドローン)が用いられるようになって、空中写真撮影が簡単に行われつつあります(画像1)。
 かつては、この無人機も大変高価なため業者による委託飛行が主流でした(「調査員オススメの逸品 第188回 遺跡の記録写真の革命-ドローン」参照)。しかし、近年では廉価で高性能な機種が販売されて、個人による撮影が可能となりました。

画像2 鳥瞰画像
画像2 鳥瞰画像


 この小型無人機は、飛行高度が150m未満に制限され、飛行時間が20~30分前後と短く、さらに雨天や強風の日は飛行ができなくなる等の欠点があります。その反面、フライトコントローラーが内蔵されているため、機体制御などの操縦負担が軽く、撮影の自由度も高い利点があります。
 この機体を使用すれば、法律の範囲内で自由な空中写真撮影ができます。調査状況に応じた鳥瞰画像や動画の撮影は、遺跡の立地や広がりを調査する大切な情報になります(画像2)。
 また、上空から垂直に撮影した空中写真をもとにして、三次元図化ソフト(Structure from Motin)を使用すれば、測量図の原型となるオルソフォト(歪みのない正投影写真)を作成することができます(画像3)。

画像3 オルソ画像
画像3 オルソ画像


当協会でも令和3年度から小型無人機を一機購入し、調査に使用できるように習熟訓練をおこなっています(画像4)。
 今のところ、ドローンを使用した調査は検証実験の段階です。しかし、「空」という新たな視点を用いた調査は、新たな調査方法を開拓する装備アイテムとして、大きな可能性を秘めていると考えています。

◆おまけ
 当協会の無人機を使用した遺跡紹介がYoutubeに投稿されています。
【発掘!古代の東海道】 高野遺跡(滋賀県栗東市)の調査成果 (https://www.youtube.com/watch?v=sFLFTVKrTEk

※空中写真については、「調査員のおすすめの逸品 No.13 過去の情報の詰め合わせ-空中写真-」でも紹介しています。

画像4 習熟訓練中の飛行
画像4 習熟訓練中の飛行


【註1】写真測量発達史委員会編「日本写真測量発達史年表」『写真測量』11巻special号 1972年 p.p102-152
(神保 忠宏)

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