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調査員オススメの逸品 第195回 ブロック・ダイアグラム~地形図を立体的に表現する図法 

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最近では、国土地理院の数値地図をはじめとするデジタル地形図や作成ソフトウェアの発達によって、簡単に鳥瞰図を作成することができます。しかし、かつて鳥瞰図の作図はすべて手作業でおこなっていました。特に地形図から描き起こす「ブロック・ダイアグラム」は、正確な鳥瞰図を作成する図法として今も使われています。
今回は、「ブロック・ダイアグラム」とその技法を応用した鳥瞰図作成方法を紹介します。
ブロック・ダイアグラム(ブロック・ダイヤグラム)とは、地表の起伏を表現する方法です。その図法は透視図法と等角投影法がありますが、今回は簡易な等角投影法を説明します(註1)。

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図1

手順は以下の通りです。
(図1参照)
⓵ 地形図から等高線を一定の高度ごとに抽出した図を作成
⓶ その図から平行四辺形に歪ませた図をつくる
⓷ ⓶の図上にトレシングペーパーを置き、一定の間隔で上方移動させながら等高線を転写して図を仕上げます

こうして作成したブロック・ダイアグラムは、平面図と比べて稜線や谷が容易に判読できますが、欠点として作図に多くの時間と労力を必要とします。等高線を詳細に抽出して作図すれば立体度が増してわかりやすくなります。しかし、抽出した等高線を平行四辺形に変換する作業が大きな負担となるため、等高線をある程度省略して作図しなければならないのです。
そこで、この欠点を補うために様々な人々が作図法の改良を行いました。その中で私が好んで用いたのは、「等高線上方移動法」という、地形図を平行四辺形に歪ませることなく作図する方法でした(註2)。これならば、等高線を省略することなく作図することができます。
やがて、パソコンのソフトウェアが普及すると、紙やペンに代わって画像編集ソフトウェアを用いた作図に移行しました。
ソフトウェアを使用すれば、手で描き起こす作業の省力化が図れると考えた私は、レイヤー機能を持つソフトウェアを使用していろいろな作図方法を試してみました。
試行錯誤の末に確立した、私のブロック・ダイヤグラム作成法は以下の通りです。

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図2

(図2参照)
⓵ スキャナで取り込んだ原図を、編集ソフトウェアで起動させる
⓶ 等高線を1レイヤーごとに敷き写しする。
⓷ 「変形」機能を使用して矩形を任意の方向に回転し、平行四辺形に変える。
⓸ 1レイヤーごとに一定の間隔で上方移動を行い図を仕上げる。
これは、従来のブロック・ダイアグラム作図法と等高線上方移動法の欠点を編集ソフトウェアで補ったもので、一度等高線を敷き写しすれば、様々な角度のブロック・ダイアグラムが作成できる長所があります。しかしながら、その後高精度な鳥瞰図を作成するソフトウェアが続々と発売されたため、最近では発掘現場で実測した遺構図をとりあえず鳥瞰図に表現したい時に作図する程度です。
3D地形図は手軽さと精度において優れていると思います。しかし、手作業に慣れた私にとってブロック・ダイアグラムは作りごたえを感じるなじみのある逸品です。(神保 忠宏)

註1:田山利三郎「ブロック・ダイヤグラムの描き方」『地理学講座』1.地人書館 1931年
「国立国会図書館デジタルコレクション」から閲覧できます(2016年10月現在)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1243340/1?tocOpened=1

註2:土井喜久一「等高線上方移動法によるブロック・ダイアグラム」『地図』16No.2.1978年

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