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調査員のおすすめの逸品№359 製図ペンと製図ソフト

その他

 突然ですが問題です。写真に示しているこの道具は何でしょう?

 これは製図ペンといい、メーカー名にちなんでロットリングとも呼ばれています。発掘調査の成果をまとめた報告書には、遺構や遺物の図面が不可欠です。しかし、現場などで作成した図面は方眼紙に鉛筆で書かれているため、線の濃さが一定でなかったり方眼が邪魔になったりしており、図面をそのまま報告書に載せることができません。そこで、決まった太さの線で図面を写すトレースという作業を行います。一定の太さで線が引けることから、このトレースで製図ペンが使われるのです。

問題:これは何でしょう?(答えは文章中にあります。)

 決まった太さの線が必要なら、安価でどこにでも売っているボールペンやミリペンを使えば良いと思うかもしれません。しかし、細すぎてボールペンでは引けない線が図面で用いられること、ミリペンはペン先がつぶれやすく、線の幅が変わったり本体が使えなくなったりすることから、トレースでは製図ペンが用いられます。

 一方、製図ペンにはデメリットもいくつかあります。製図ペンは正しく使えば長持ちするのですが、しばらく使わないときは分解して水洗いが必要など、普段使っている文房具よりはるかにメンテナンスの手間がかかります。また、製図ペンはインクを用いるため、間違えると修正ができません。

 トレースの場で長年重宝されてきた製図ペンですが、一部生産が終了してしまい現在では入手困難になってしまいました。その代わりに、トレースには製図ソフトが使われるようになりました。今まで紙とペンで行っていた作業をパソコン上でやることによって、さまざまなメリットが生まれました。インクを使わないため、ペンのメンテナンスが不要になったこと、服や周りが汚れなくなったことがありますが、最大のメリットには「やり直しが効くようになった」ことです。

 製図ソフトの導入は必ずしも良いことばかりではありません。製図ソフトではマウスを使って線を引くため、線の引き方が製図ペンとは全く異なります。ペンだと比較的簡単にできた「曲線を一本なぞる」作業ですら、線があらぬ方向を向いたり想定外の場所で線が曲がったりして満足に行うこともできません。製図ソフトはトレース作業をとても便利にしましたが、使いこなすにはまだまだ修行が必要なようです。

(森田真由香)

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