オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 No.36 地球に優しい、ECOな逸品-紙箱-
ガサゴソガサゴソという音が整理室から聞こえます。ネズミが出た?そうではありません。整理調査を担当している調査補助員さんが折り紙をし ている音です。千羽鶴を折っている?そうではありません。「紙箱」を折っている音です。
大抵の人は長方形の紙を折って、箱を造った経験があると思います。しかし、日常的にこの箱を使うことはまずないでしょう。しかし、我々の仕 事場ではこの紙箱が様々なシーンで大活躍するのです。
整理調査の第一歩は、出土した土器の洗浄作業です。土器には様々な情報が含まれていますから、どんな小さな土器でもおろそかにできません。 けれども小さな土器や、一つの遺構から出土した土器が少ない場合など、大きな乾燥籠に入れておくと、乾かしている間にほかの土器と交じってし まい、取り返しのつかないことが起きる可能性があります。これを避けるために登場するのが新聞紙で折った紙箱です。このなかに、遺構ごと、層 位ごとに土器を分別しながら仕分けて入れ、乾燥させます。新聞紙や広告紙は、吸水性があり土器の乾燥にはもってこいの素材です。
洗浄した土器は分類し、復元や実測、写真撮影の作業へと移っていきます。これらの行程で活躍するのが、展覧会のチラシやポスターのアート紙 で造った上級グレードの紙箱です。丈夫ですので、土器の分別保管にはもってこいですし、裏が白の紙の場合が多いので、直接メモも書けます(念 のため:埋文センターには様々な全国から展覧会のポスターやチラシが送られて来ます。これらはすべて掲示したり、来館者に配布したりしますが、 会期が終了したポスターや残念ながら余ってしまったチラシは廃棄することになります。紙箱に使うのはもちろん、このようなポスター、チラシ類 です。)。さらには、鉛筆の削りかす入れ、道具入れ、おやつの飴ちゃん入れ等、その用途は無限です。
さらには浅い紙箱や深い筒型の紙箱、大きな紙箱、小さな紙箱、星形の紙箱等、用途に応じた(時には趣味的な)形状、用途に応じた素材で紙箱 を折る技が、整理室には伝承されています。
元々、廃棄の対象となる紙類で作る紙箱ですから、まさにリサイクル!エコな取り組みの一環ともいえます。世の中に無駄なものは何もないはず なのに、無駄なものが生まれるのは、それを無駄にしているのは人間の無知と、想像力の欠如なのかもしれません。整理室の調査補助員さん達は、 作業の内容に応じた一番適した形、素材の紙箱をせっせと折り、消費しています。ちょっとしたリサイクルから生まれた、我々の仕事に欠かせない 逸品です。
(大沼芳幸)