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調査員のおすすめの逸品№361 ダンジョン攻略はしたことはありませんが…遺跡攻略の優れもの―携帯電話の”コンパス機能”―

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 遺跡の発掘調査成果を読み解くときに、方位はとても大事な情報となります。現代の街並みを思い浮かべると、道路や家の方向は大概あるまとまりで同じです。これは昔も同様で、典型的な例としては、平安京では条坊制といわれる一定方向のプランに基づいて道が設定され、家屋敷が並びます。こうした一定方位のまとまりが、寺院や、国や地方の公の機関、また条里制と言われる土地区画制度による耕地など、多くにみられます。最も新しい街づくり計画が、現在の街並みに反映されていて、開発の少ない場所では、県内では平安時代以降に広く普及した条里の方向を向いていることが多くみられます。

写真1 ”コンパス機能”画面(表示例は北から東に33°振っていることを示している)

 発掘調査ではいろいろな時代の遺構が発見され、その状況は図面や写真などで記録されます。近年では図面は一般的に、世界的に定められた「世界測地系」といわれる座標割りに基づいて提示されますが、これには現地でいろいろな機械や道具を使って図面に記録する必要があり、少々時間を要します。

 現地を見学した際に表示がないときなどには、遺構の方位を短時間でおおまかに把握したい場合にもどかしさを覚えることになります。

 最近では、そんなもどかしさを解決してくれるものがあります。携帯電話アプリの“コンパス機能”です。現地で、例えば建物遺構の向きに携帯電話を持って立つと、「●°」と表示してくれ、これまでの事例や研究成果の示す方位と照らし合わせて、何と同じなのか、また違うのかを判別するための情報を、すぐ提示してくれるのです。しかもポケットに入るコンパクトさ。もちろん詳細な方位の検討は、図面に遺構を正確に記録してからとなりますが、暫定的に方位の見当をつけるにはありがたいものです。さらにこの機能は、標高を教えてくれ、また水準器としても使えます。

 一般的には目的地に赴くときは地図やナビゲーション機能を使うことが多いと思いますので、この“コンパス機能”が使われるのは、登山やアドベンチャー、サバイバル、はたまたダンジョン(迷宮)攻略?!まだまだ機能は進化していくことと思います。

 携帯電話アプリの“コンパス機能”は便利で有難い逸品です。

(中川治美)

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