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調査員のおすすめの逸品№370 御朱印の御先祖さま―鴨田遺跡の巡礼札―

長浜市

 昨今は、いろいろな御朱印がブームとなっていますね。社寺を参詣していただく、ありがたい御朱印はもちろんのこと、お城や古墳などの文化財見学の記念として、様々な御朱印(御城印・御墳印など)を手に入れることができるようになりました。特に御城印は、特別史跡安土城跡や特別史跡彦根城跡のような有名なお城跡の見学の記念アイテムとして定着しましたね。

写真1 佐生城跡・井元城跡の御城印(東近江市観光協会で販売中)

 最近はさらに、知る人ぞ知る、よりマニアックな「地元の宝」というべき隠れた名城まで、御城印が配備されつつあります。例えば、安土城に先行する石垣をもつ佐生(さそう)城跡や、織田氏VS六角氏の合戦に用いられた付け城である井元(いもと)城跡の御城印なども、遺跡見学(攻城記念)の証として、東近江市観光協会で手に入れることができるようになりました(写真1)。

 また、文化財観光の先進県である奈良県では、特別史跡巣山古墳や弥生時代の史跡唐古・鍵(からこ・かぎ)遺跡など、多くの遺跡で御朱印が作られ、遺跡見学の新たな楽しみとなりつつあります。

写真2 巣山古墳御墳印(奈良県広陵町文化財保存センターなどで販売中)
写真3 唐古・鍵遺跡「弥生の御朱印」(唐古・鍵考古学ミュージアムで配布中)

 こうした御朱印は、江戸時代、西国三十三所観音霊場や四国八十八カ所など、各地の霊場を参詣した際に、お経を納めた証として記してもらう「納経帳」に由来するとされ、納経を伴わない御朱印帳へと変化しました。では、中世以前の巡礼では、御朱印に代わるようなものはなかったのでしょうか? 実は、中世以前の巡礼では、現在も参詣寺院を「札所」と呼ぶように、巡礼者が持参した「お札」を「札所」で納めてまわる形をとっていたようです。

 長浜市の鴨田遺跡では、こうした巡礼が行われていたことを示す木簡(巡礼札・滋賀県指定文化財)が54点も発見されました。これらには「三十三所巡礼聖一人」・「つのくに(摂津国)あくたがわ(芥川宿)の住人」・「宝徳四年三月四日」など、巡礼の内容や巡礼者の住所・参詣日が墨で書かれています。多くの木簡に記された宝徳4年(1452年)の紀年銘からみて、西国三十三所巡礼に関係する最古の巡礼札といえます。不思議なことに、鴨田遺跡は、周辺にある西国三十三所の札所の竹生島宝厳寺(ちくぶしまほうごんじ)より、琵琶湖を隔てて15㎞も離れています。なぜこの場所から大量のお札が見つかったのかは、今も解明されていません。

写真4 鴨田遺跡出土の巡礼札(滋賀県蔵)

 巡礼札は現在、滋賀県立安土城考古博物館の特別収蔵庫で保管されていますが、資料状態を考慮して、他館への貸出を含めて、めったに展示できない資料の1つとなっています。ところが、この春、実に8年ぶりに巡礼札が展示公開されることになりました(写真4)。

 春季特別展示「稀品・逸品-滋賀県出土の指定文化財を中心に-」(会期:令和6年4月27日(土)~令和6年5月26日(日))に鴨田遺跡の巡礼札が出品されますので、ぜひこの機会に、御朱印の御先祖さまをご覧いただいてはいかがでしょうか?

写真5 春季特別展チラシ

(滋賀県立安土城考古博物館 学芸員 北原 治)

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