オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 No.99 火起こし道具(舞い錐・火きり臼)
「火」は、明かりをともしたり、お湯を沸かしたり、あるいは料理をしたり、寒い季節に暖まったりするために、昔から利用されてきました。「火」を起こす方法には、大別すると、木と木をこすり合わせて火種を作る摩擦式発火法と、硬い石や鉄片を打撃して火種を作る打撃法の2種類があります。このうち、当協会の考古学体験学習で採用している火起こしの方法は、摩擦式発火法で、「舞い錐(きり)」と「火きり臼(うす)」の2つの道具を使います。
「舞い錐」を使った火起こしは、神社での儀式(神事)などに、江戸時代初頭頃から使用されるようになったようですが、小学生でも簡単に火が起こせることから、考古学体験学習のメニューとなることが多いようです。
この火起こし器の使用方法は、『①火きり臼を両脚でしっかりと踏んで固定する。②火きり臼の穴に舞い錐の軸(棒)の先端をさす。③舞い錐の柄を両手でもち、リズムをつけて上下に動かし、その反動ではずみ車(下のほうについている大きな円盤)を勢いよく回転させ、軸(棒)の先端と火きり臼の上面で摩擦熱をおこす。』といった簡単な方法です。
この作業を動作が途切れないように5分ほど頑張ると(個人差あり。夏に開催する火起こし選手権(有料)での歴代1位は1分39秒(小学校高学年部門))、火きり臼の穴の先に開けたV字形の切り込みに、火きり臼が削れてできた木の粉がたまり、その中に火種ができます。この火種に発火材料(麻紐をほぐしたものなど)を乗せ、細く長く息を吹きかけると、「火」が起きます。
「舞い錐」は、数年前までは職員が手作りしていましたが、材料の入手が難しくなったことから、現在は市販の物を購入して使用しています(軸になる棒は取り換え可能です)。「火きり臼」は当初から手作りです。材料になる板材をよく乾燥させたあと、上面にくぼみをつけ、くぼみの先にV字形の切り込みを入れて完成です。この切り込みの入れ方によっては火種が起きにくくなってしまうので、何度も試作を重ねながら、製作しています。
今回紹介させていただいた「火起こし器」を使用した体験学習は、滋賀県埋蔵文化財センターで「みどりのつどい」(毎年5月の連休中に開催)や「レトロ・レトロの展覧会」(毎年夏休み期間中に開催)、「文化ゾーン探検隊」(毎年7・10月に開催)などの際に体験できます。当協会の職員が指導させていただきますので、初めての方でも大丈夫です。ぜひ、チャレンジしてみてください。
※上記の火起こし体験に関する来年度の日程につきましては、当ホームページ上でご確認ください。料金は無料です。
(田中 咲子)