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元伊勢屋の跡に建つ石碑

新近江名所図会

新近江名所圖会 第136回 東海道名物「豆腐田楽」発祥の地を訪ねて

栗東市
元伊勢屋の跡に建つ石碑
元伊勢屋の跡に建つ石碑

江戸時代に安藤広重が描いた『東海道五十三次』(天保4年(1883))の浮世絵などで紹介されている、栗東市岡にある「豆腐田楽(でんがく)」発祥の地を訪ねて来ました。この地は、京都・江戸間を結ぶ旧東海道沿いにあり、草津・石部宿間(11.7㎞)に設けられた、2つの立場(たてば:休憩所)のうちの1つ、目川(めがわ)立場のあったところです。この立場は岡村に置かれていたのですが、隣の目川村との境にあったため、目川を名乗っていました。第32回で紹介した草津宿にある「追分道標」から、草津川沿いに2㎞ほど東に進んだ場所にあります。
名物の「豆腐田楽」は、硬めの豆腐を串にさして味噌をつけて焼いたものです。蕪や大根の葉を細かく刻んで薄い塩味で炊いたご飯に混ぜた菜飯(なめし)とともに、『目川田楽』の名でセット販売されていました。資料によると、最初に売り出した茶屋は元伊勢屋で、現在は跡地に石碑が建っています。旅人達にたいへん人気を博したことから、同じ村内に小島屋と京伊勢屋の2軒も同様の店を構えるようになったそうです(どちらも跡地に石碑が建っています)。

おすすめPoint

再現した豆腐田楽
再現した豆腐田楽

岡自治会のサロンであり、旧東海道を歩く観光客の休憩所にもなっている「ほっこり庵」では、予約制で田楽・菜飯を提供しています(田楽セット700円、1週間前に要予約、電話:077‐554‐0639)。
私は残念ながら「ほっこり庵」に行けなかったので、滋賀県に伝わる郷土料理についてまとめた『日本の食生活全集25 聞き書 滋賀の食事』(社団法人農山漁村文化協会1991)で紹介されていたレシピをもとに、当時の豆腐田楽を再現してみました。水抜きした豆腐を串にさして焼き、少し焦げ目がついたら木の芽味噌をつけて、もう1度焼いて完成です。我ながらおいしくでき、家族にも好評でした。

周辺のおすすめ情報

和中散本舗
和中散本舗

草津・石部宿間に設けられたもう1つの立場は、目川立場から東に4.5㎞ほど進んだところにある梅木村(現栗東市六地蔵)に置かれていました。ここには、胃痛や歯痛にも効く万能薬、和中散を販売する店が数軒あったそうです。現在は、和中散販売のほかに公家や大名などの休憩所もつとめた、大角家住宅和中散本舗(国指定史跡・名勝)が当時の姿を留めています。ここは文化財の宝庫で敷地は史跡、その中の建物は重要文化財、お庭は名勝になっています。見どころいっぱいの内部は見学可能ですが、予約が必要です(入館料400円、1週間前に要予約、電話:077‐552‐0971)。

アクセス

【公共交通】元伊勢屋跡へはJR琵琶湖線「草津駅」からバス「岡」下車すぐ
旧和中散本舗へはJR草津線「手原駅」から徒歩25分
※元伊勢屋跡から旧和中散本舗までは歩いても行けます(約1時間)。

より大きな地図で 新近江名所図会 第101回~ を表示
(田中咲子)

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