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調査員のおすすめの逸品 №351ー土器を保護するー意外なものの再利用

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出土した遺物をはじめ様々な文化財には、モノによっては空調が必要なものや極めて脆弱であるため気を使わなければならないようなモノもありますが、普通の土器でしたら大概の場合は収納箱にそのまま入れておいても大丈夫です。ただしそれがどこからいつ出土して、どの報告書に掲載されているのかという情報がわかるようにだけはしなければなりません。箱にはむき出しで入れることもありますが、小さければポリ袋などに入れることもあります。

写真1 フルーツキャップを被せた果物
写真1 フルーツキャップを被せた果物

ですが、土の中に何百年何千年と埋まっていた土器、かなり弱くなっているものや、土器をパズルのようにくっつけても足りないパーツがあり、不完全な形にしか復元できないもの、くっつけても少しの衝撃でまたバラバラになってしまうようなものも少なくはありません。このような土器たち、苦労してくっつけたのに接着がはがれてしまわないようにしなければなりません。ずーっとその作業台においておければいいのですが、そういう訳にはいきません。くっつけた後には実測をし、写真も撮り、報告書執筆のために手にとって観察をしたりもします。その後は箱詰めして収蔵庫へと運び込みます。また、収蔵庫へしまってからも展示などで運び出すこともあります。収蔵庫への保管や展示に際しては運搬や移動がつきものです。弱い土器はこのような移動の時が一番危険なのです。一緒に詰めてある土器とぶつかったり、手に持った時の力加減や持ち方により、接合がはずれることもままあります。そのような時に役立つのが「緩衝材」です。一口に緩衝材と言っても色々とあります。いわゆるプチプチ(エアーキャップ)もそうですし、新聞紙などをクシャクシャと丸めたものもその一つです。本シリーズの第66回で紹介された綿布団もよく用いられます。今回紹介するものは皆さんが普段目にするアレです。

写真2 フルーツキャップを被せた土器
写真2 フルーツキャップを被せた土器

果物屋さんに買い物に行った時、ちょっと値の高い果物に被せてあるアミアミを目にしたことありますよね。あれのことなんという名前か知っていますか?果物の生産や流通に関わっている人以外、またはこれを作っている人を除いて名前を知っている人は少ないと思いますし、その存在自体も気に留めていないことでしょう。アレの名前は「フルーツキャップ」と言います(写真1)。このフルーツキャップがちょうどいい感じなんです。傷みやすいフルーツに被せるだけあって、ゆるくもなくまたきつくもなく優しく包み込むように土器を保護してくれます。写真は古墳時代前期の小型丸底壺という土器に被せたものです(写真2)。ジャストサイズです。ただ一つ残念なことは、フルーツに被せるものだけあって、大きさが限られてきます。
メロンやスイカなどに使われているものは多少の大きさがありますが、いかんせん購入するのにお金がかかります。そのため、ここの整理室にストックされているものはオレンジなどあまり高くない果物に使われている小さいものばかりです。フルーツキャップそのものを購入したらよいのではという方もいらっしゃるかもしれませんが、新しいものを探してリユースする面白味などが削がれるようで・・・
ということで、またなにか新しい工夫がみつかれば、このコーナーで紹介していきたいと思います。

(内田 保之)

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