新近江名所図会
新近江名所圖會 第451回 生きていることの喜びと、消えていく遺跡の悲しさを思い知った調査 ―江頭南遺跡―
『インタビュー/調査員の履歴書』でも触れましたが、江頭南遺跡の調査は思い出に残る調査でした。
河川敷を散歩中の人が埴輪を発見するという不時発見から始まった江頭南遺跡の調査は、本当の川の中での発掘調査という珍しいものでした。その危険性と難しさは、なかなか伝わり難いのですが(写真1)、私にとっては生きて帰れたことの喜びと、遺跡が無くなってしまった悲しさを味わいました。
調査の成果は『インタビュー/調査員の履歴書』や『令和5年度 江頭南遺跡発掘調査概要』をご覧になると分かると思います(写真2・3)。


今回は、現地調査後の遺跡の末路を知っていただきたいと思います。開発行為に伴う遺跡の発掘調査地は、調査終了後は事業者に引き渡され、工事により壊れていくものです。そのため、徹底的に壊しながら調査し、記録をとっていきます。新人の頃は、現地を引き渡すときは寂しいものでしたが、年を重ねるにつれて慣れていきました^^;
江頭南遺跡も、現地を引き渡すときには大して感じるものはなかった…というわけではなく、調査に入るまでと調査中の苦労を思い出すと、新人の頃のような寂しさを感じました。
毎日、川の水位を気にしたり、作業員さんや調査補助員さんが川に落ちていないだろうか、突然鉄砲水が来ないだろうか、などと心配事は多かったものの、いろいろと勉強になることも多く、工事の方々にも協力してもらったことを思い出すと、楽しいこともあったな~と思ったりもしました。
冬の間は雨も少なく、水位は安定していましたが、現地調査が終わる頃の3月になると、やや雨の日が多くなりました。調査が終わった後も、とんでもない降り方をしたときには現場を見にいったりしてました。
そんなある日、夏の豪雨を思わせる雨が降りました。早速現地を見に行きました。ちょっと引いてしまいました^^;
上流からの水は川幅いっぱいまで増水し、不気味にゆっくりと、でも激しく流れていました。堤防の上を歩いて現地までいくと、遺跡が濁流に飲まれているのが見えました(写真4)。墳丘の盛土は流されていきました(もちろん調査済み)。

「こうなる前に終わってよかった…」と思う一方、「思い出が流されていく…」と感じながら、「シャレにならんて!」と思ったり… いろんな思いがある遺跡なので、自分も忘れたくない、忘れられて欲しくないという思いから、動画1・動画2も作りました。2本とも短い動画ですので、よろしければご覧ください。
川の中で古墳がみつかるというのは、琵琶湖をかかえる滋賀県らしい遺跡です。どうかみなさん、江頭南遺跡のことを忘れないでください。
●江頭南遺跡の遺物を見たい方へ
下記の日程で、安土城考古博物館内の安土分室で整理室の公開をします。整理調査中の遺跡の展示や各種体験も用意してます。江頭南遺跡出土の埴輪も展示されますので、是非お越しください。
イベント名:整理室公開事業「あの遺跡は今! Part33」
日時:令和8年10月10日(土)・11日(日)
9:00~17:00(入館は16:30まで)
参加費:無料(ただし体験学習は有料:300円、無くなり次第終了)
(企画整理課 重田 勉) 重田勉の活動状況はコチラ
※大変危険なので川には入らないでくださいね!