調査員の履歴書
『インタビュー/調査員の履歴書』№29 仕事の中で出会う、意外なテーマ 甲賀流の・・
Q.所属部署と名前を教えて下さい。
A.企画整理課に所属しています。阿刀弘史(あとう こうじ)と申します。
Q.このコーナーが始まった、ごく初期に登場されましたね。
A.第2回ですね。あの時は発掘調査を担当する調査課所属でしたが、令和8年度から整理作業担当の現在の部署に異動になりました。
Q.前回は、この世界に入ったきっかけや印象的だった体験をうかがいました。特に木製品との出会いのお話が中心でしたが、例えば講座や講演会を担当されるときも、やはり木製品のお話をされることが多いんですか?
A.いいえ、他のネタで依頼されることの方が多いです。
Q.他のネタと言いますと?
A.甲賀忍者の話とか。
Q.え、なんでまた忍者?(笑)
A.という反応になりますよね。自分でも「まさか」です。正直なところ、あるタイミングまで忍者に特に興味を持ったこともなかったですし。
Q.どういうきっかけで忍者に興味が向いたんですか?
A.2003年、滋賀県立安土城考古博物館の学芸課に所属していた時のことです。2004年の夏休み期間の企画展で何をやろうか考えていた時に、調査課の複数の先輩から「忍者やれば?」という提案をいただきました。…「仮面の忍者赤影」って知ってます?
Q.滋賀県が舞台の特撮TVドラマですね。かなり古い。
A.もともとは漫画で、最初のTVドラマは1967年です。で、ちょうど2003年、主人公の赤影を演じておられた坂口祐三郎さんが亡くなられた、というニュースがあったんです。そういうタイミングで、しかも赤影に命令を下すのは織田信長や豊臣秀吉、竹中半兵衛という面々ですので、安土城考古博物館でやるのはばっちりじゃないか、というんですね。でも私は、「いやいや、博物館で忍者の展示なんて無理でしょう」と言って流すつもりでした。
Q.ということは流せなかった、と。
A.はい、当時の学芸課長が「それ面白いな、それでいこう」とおっしゃいまして。でも、2003年頃ってまだ忍者を学問的な研究対象として見る、ということはほとんど行われていませんでした。文献を探そうにも何も無くて、とりあえず目についたものを手当たり次第に入手して何とか組み立てようと必死でした。
Q.でも、なんとかなったんですね。
A.文献を専門にしている同僚がすごく頑張ってくれたのと、展示の設営業者さんや図録のデザイナーさんがノリノリで参加してくれたのが本当に助かりました。また、考古の方の同僚たちが忍者関係のキャラクターグッズなどの私物を提供してくれたのもうれしかったです。あと、何よりも甲賀忍術博物館や甲賀流忍術屋敷などの施設の方々が、右も左もわからない状態の私に大変親切丁寧にいろいろと教えてくださったのが大きかったと思います。
Q.印象的な出来事とかはありましたか?
A.この展示を担当したおかげで、様々な方たちと知り合いになることができました。展示の後、作業の中で感じた課題や限界などを当協会の紀要にまとめたのですが、それをきっかけに甲賀流忍術研究会の方々からお声かけいただいて、本物の忍者の子孫の方とも知り合うことができましたし、甲賀流忍者検定にもご招待いただきました。
そうそう、その甲賀流忍者検定にうかがったときに、私を見て駆け寄ってきた方がいたんです。「阿刀さんですよね!紀要に忍者について書いておられるのを拝見しました!」と言って、名刺をくださいました。名刺には「磯田道史」…今やNHK『英雄たちの選択』をはじめ、まさにひっぱりだこの磯田先生でした。この頃すでに『武士の家計簿』が映画化されたりして注目され始めていたと思いますが、私のように無名の者が職場の紀要に書いたものにまで目を通しておられるのか、と驚き、非常に感激しました。
Q.それはすごいですね。その後も忍者の勉強は続けているんですか?
A.はい。忍者研究を取り巻く環境は、この20年で劇的に変わりました。やはり磯田先生のご活躍で、本物の忍者関連の古文書がたくさん発見されつつあること、それを甲賀市がきちんと調査して成果をまとめて刊行していること、などが大きいと思います。甲賀流忍術研究会は甲賀流忍者検定を毎年開催していますし、2018年には国際忍者学会も設立されました。また、三重大学の人文学部人文社会科学研究科には忍者・忍術学講座が開設され、忍者を様々な側面から学問として研究していく道が拓けました。
なので、20年前と比べると、圧倒的に情報量も増えて、より深く取り組めるようになってきたと思います。私自身、今もそういった状況から新しい情報や知識を得ることが多いので、まだまだ続けていきたいと思います。そして、そこから得た知見や考えを、また歴史講座などで皆様にお伝えしていきたいと思っています。どうぞお楽しみに!

(企画整理課 阿刀 弘史) 阿刀弘史の活動状況は【コチラ】
◆◇◆ あわせてのご案内1 ◆◇◆
関西考古学の日2026記念講演会『天下人たちのマネジメント戦略』
関西考古学の日2026の関連事業として、信長・秀吉の時代における「統治の仕組み」等に焦点を当てた記念講演会を下記のとおりに開催します。基調講演は中井 均先生(滋賀県立大学名誉教授/写真)で、これに近畿の調査法人による調査研究事例報告3本を加えてお送りします。

当日は、会場の安土城考古博物館で、令和8年度秋季特別展・安土城築城450年記念『天下人の城下町 安土』を開催中(下記「あわせてのご案内2」参照)!ぜひ、セットでお楽しみください。
◆◇◆ あわせてのご案内2 ◆◇◆
令和8年度秋季特別展・安土城築城450年記念「天下人の城下町 安土」
450年前、尾張国(愛知県)から台頭して天下静謐を目指した織田信長は、近江国(滋賀県)安土で、壮大な城の建築に着手し、そのお膝元に新たな城下町を築きました。彼がとったさまざまな工夫により、町は大いに賑わい、その後の城下町のモデルとなって、大坂、江戸へと引き継がれていきました。その起点となった安土城下町の形成過程や実態を残された資料から探ります。
会期 2026年10月10日(土)~2026年11月15日(日)
詳細 コチラをご覧ください
