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金勝寺本堂

新近江名所図会

新近江名所圖会 第111回 湖南仏教文化の中心―金勝寺-

栗東市
(栗東市荒張)
金勝寺本堂
金勝寺本堂

競走馬の調教で有名なJRA栗東トレーニングセンター(通称トレセン)から県道12号を信楽方面へ4.5㎞進むと、金勝山(こんぜやま)の頂上近くの金勝寺(こんしょうじ)に辿りつきます。天台宗の古刹で、今は仁王門や本堂などのお堂がいくつか残るだけですが、かつては金勝寺三千坊ともいわれ、信楽の阿星山や飯道山を含めて壮大な仏教文化圏を構成し、湖南地域の仏教文化の中心をなしていました。奈良時代に聖武天皇の勅願により大僧正良弁が開いたといわれ、東大寺の末寺として国家の平安を祈願する寺院であったようです。平安時代に天台宗となり、中世には後醍醐天皇をはじめ光厳天皇・後村上天皇・後光厳天皇の祈願寺であったほか、足利尊氏・足利義詮も帰依するなど繁栄しました。今も山中に平坦地として残る多数の坊跡から往時の繁栄ぶりがしのばれます。本堂など伽藍は室町時代の天文18年(1549)の火災で焼失したのですが、後奈良天皇の命により再建され、江戸時代、歴代将軍にわたり寺領を安堵されました。

おすすめPoint

金勝寺仁王門
金勝寺仁王門

両サイドに苔むした石垣が連なる参道を登ると仁王門です。参道階段の踏み石は山形に配置されて独特の風情がありますが、最近、参詣者が歩きやすいように参道がならされて、わかりにくくなったのは残念な気がします。
仁王門をくぐって右手にある二月堂では、木造軍茶利明王像が、逆立った頭髪に下唇を噛む怒りのまなざしで睨みつけています。平安時代前期(9世紀)に作られた重要文化財に指定されている優れた像で、手の届きそうなほど近くから拝観できて迫力満点です。本堂には本尊の木造釈迦如来坐像(平安時代後期〈12世紀〉・重要文化財)が穏やかに座っておられます。これらのほかにも、木造虚空蔵菩薩半跏像や木造毘沙門天立像・木造地蔵菩薩像など、重要文化財に指定されている平安時代の仏像があります。お寺全体に静寂感が漂っていて、ゆっくりじっくりと鑑賞できるのが良い感じです。

周辺のおすすめ情報

馬頭観音堂の絵馬
馬頭観音堂の絵馬

金勝寺からさらに山を登ると(車道有り)展望駐車場があって、湖南の風景を一望できます。駐車場のすぐ近くには馬頭観音堂があり、今年4月に馬頭観音の開眼供養が行われました。とくに人馬の健康・安全を祈願するトレセン関係者のお参りが多く、ここの絵馬は騎手を乗せて疾走するサラブレッドの形をしていて独特です。
ここからハイキング道を1時間ほど歩くと史跡狛坂磨崖仏があります。高さ7mあまりの花崗岩の巨石に三尊仏を陽刻したみごとな磨崖仏で、製作年代は平安時代初め頃かといわれています。

アクセス

JR琵琶湖線「栗東駅」下車 車40分
名神高速道栗東ICから25分


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(平井美典)

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