新近江名所図会
新近江名所圖会 第113回 三井寺散策 ―園城寺周辺を歩く―
京阪電車を三井寺駅で降りて疎水沿いに少し歩いて北国橋の交差点で右折、大門通に出れば左手に園城寺の大門(仁王門・重要文化財)が見えます。仁王門をくぐった先には国宝の金堂があり、その裏手には閼伽井屋(あかいや・重要文化財)が軒を接するように建てられています。閼伽とは、仏様に供える水のことを言います。三井寺の名は、この地の岩の間から湧き出る霊泉で天智・天武・持統の三天皇が産湯を使ったことから「御井の寺」といわれ、後に円珍が密教の三部灌頂にこの水を用い「三井」と呼ばれたことに由来します。
金堂の横の鐘楼(重要文化財)には近江八景の「三井の晩鐘」として知られている鐘(滋賀県文化財)があります。大晦日の除夜の鐘で有名で、日本三名鐘にも数えられています。1回300円で誰でもつかせてもらえます。私もつきましたが、とても良い音色でした。
この鐘楼の裏手には「弁慶の引き摺り鐘」(重要文化財)と言われている鐘が納められている霊鐘堂があります。文字通り三井寺を攻めた弁慶がこの鐘を比叡山まで引き上げてついたところ、「イノー、イノー」と鳴ったので谷底に放り投げられたという伝承を持つ鐘で、表面には引き摺ったような傷が無数についています。この鐘は奈良時代の鐘で俵藤太(藤原秀郷)が竜宮から持ち帰ったと伝えられています (この鐘はつけません) 。
おすすめpoint
三井寺金堂の内陣の周囲には、寺所有の仏像がぐるりと周りを囲むように安置されています。これらの中には、千手観音立像や愛染明王座像など平安時代後期に作られた仏像がたくさんあります。仏像のほとんどは、手で触れる(もちろん触ってはいけません)ほど近い距離に置かれていますが、信じられないことに、その中には重要文化財クラスの仏像が混じっています。そんなすごい仏像がさりげなく安置されているところに、三井寺の凄さを感じました。
周辺のおすすめ情報
大津市歴史博物館は平成2年(1990)に開館し、大津市内の歴史・考古・民俗を集めた展示を行っています。1階は堅田や坂本などの町並みをジオラマで復元し、屏風絵や絵図・出土遺物などで大津の中世を紹介しています。2階には大津京のジオラマがあります。現在の町並みの上に発掘調査箇所を重ねた展示で、大津宮時代の建物の配置と現在の建物や道との関係が一目で理解できます。これを見ると、大津宮の中心線が現在の市道として利用されていることがよくわかります。そのほか、大津の原始から戦後までの歴史を、出土遺物や古文書・絵図などでわかりやすく説明しています。
1階の途中には吹き抜けのスペースがあり、有名な「近江八景」の画像を使ったコーナーを設けて、歌川広重ファンには堪えられない空間となっています。今までに何回か企画展示で紹介されている広重の「近江八景」は、いつ見てもいいなあと思います。平成16年に開催された企画展示の図録が早々と売り切れてしまい、多くの人たちから再版を望む声が上がったため、平成22年にめでたく再版されました。受付では博物館のグッズを販売しており、そこで近江八景のシールや絵はがきセットと共に買えます。
アクセス
【公共交通機関】京阪電鉄石坂線三井寺駅下車徒歩10分
【自家用車】西大津バイパス皇子山ランプから南へ5分
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(三宅 弘)
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