新近江名所図会
新近江名所圖会 第61回 湯谷神社
湯谷神社は、JR米原駅より東へ坂を上った太尾山の麓にあり、祭神は大巳貴神(おおなむちのかみ)、保食神(うけもちのかみ)、水門神(みなとのかみ)を祀っています。
その昔、出雲の人が、諸国巡業の途中にこの地で湯泉を見つけ、この湧き出る温泉につかったところ諸病はたちまち治り、そのうえ荒地であったこの地で、稲作を始めたところ、大豊作になったといわれています。そしてそのことに感謝して祠を建てたのが湯谷神社の始まりと伝えられています。
また、戦国時代に太尾山に守護大名京極氏の支城が築かれたときには、その守護神となり、城主の米原氏も氏神として崇敬しました。現存する棟札によると、文明3年(1471年)に神社は消失しましたが、その後米原氏が再興したことがわかっています。境内には米原氏が寄進した灯篭なども残っています。
さらに、江戸時代の彦根藩主井伊氏は米原の地を重要視し、湯谷神社への崇敬も厚く、社殿の修理や数多くの神器等の寄進がありました。
境内には、明治11年に明治天皇が、北陸巡幸時に休憩場所として使用された旧本陣北村源十郎宅の建物の一部が移築されています。
また、広い境内の中には、春の桜、秋の紅葉があり、四季それぞれに楽しむことができます。
おすすめPoint
湯谷神社の祭礼として、毎年10月中旬(体育の日を含む土日の三日間)に米原曳山祭が催されています。
この祭礼は、滋賀県の無形民俗文化財に指定されており、長浜曳山祭を見習って、江戸時代の後半期に始まったといわれています。そのため、曳山自体は、年代的・構造的に長浜曳山に一歩譲りますが、子供役者が演ずる芸においては、決してひけをとらないと言われています。
祭の宵宮には、米原駅の西側へ跨線橋を越えて曳山を曳行し、夜には東側へ戻り湯谷神社へ向かう急な坂道を囃子にあわせて登っていきますが、米原曳山祭の最大の見せ場にもなっています。
また、米原曳山祭を盛り上げてきたのは、子供歌舞伎のほかに祭囃子があります。
米原では囃子のことを「シャギリ」と呼んでおり、太鼓・すり鉢・笛で構成される郷土色豊かな囃子です。
周辺のおすすめ情報
湯谷神社から遊歩道を1分ほど歩くと「国指定名勝庭園」で知られる青岸寺があります。
この青岸寺の本堂裏手にある枯山水の庭園は、昭和9年に名勝に指定されています。この庭園は、山腹を利用して築かれた回遊式と観賞式を兼ねた庭園で、空池を設け、蓬莱島を造り枯滝が組まれています。特に雨上がりには、水を表現するために用いられている池底を埋め尽くした杉苔の緑が特に美しく観賞できます。
さらに、湯谷神社から太尾山の尾根方面の遊歩道を約20分歩いた所に、米原市の史跡に指定されている太尾山城跡があります。この太尾山城は、北と南に主郭があり、別城一郭と言われており、現在も堀切や土塁、曲輪跡が見事に残されています。頂上の城跡からは、琵琶湖や湖北、湖東、湖西が展望できる絶景の里山です。
また、湯谷神社から西へ3キロ程離れた琵琶湖の畔に、日本三大奇祭のひとつである「鍋冠まつり」で有名な筑摩神社があります。この「鍋冠まつり」は、毎年5月3日の神社例祭の日に行われ、狩衣装に張子の鍋をかぶった数え年で8歳の少女たちが本殿まで渡御します。
アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線米原駅より、徒歩10分
【自家用車】名神高速道路米原IC下車10分、駐車場あり
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(氏原 玲子)
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