新近江名所図会
新近江名所圖会 第78回 大正時代にタイムスリップ-旧伊庭家住宅
近江八幡市には、「ヴォーリズ建築」と呼ばれる和洋折衷の独特な建造物がいくつかあります。これらはアメリカ人建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計による建物で、市の指定文化財になっているものもあります。その中から、近江八幡市安土町にある、旧伊庭家住宅(きゅういばけじゅうたく)をご紹介しましょう。
JR琵琶湖線安土駅から徒歩10分、安土保育園の横に建つ旧伊庭家住宅は、安土町文化財建造物第1号(現近江八幡市指定文化財)として指定を受けた歴史的建造物です。
大正2年(1913年)に、ヴォーリズの設計により、旧住友財閥の二代目総理事伊庭貞剛の四男伊庭慎吉(旧安土村村長)の邸宅として建設された和洋式木造住宅で「伊庭慎吉アトリエ」、「伊庭家住宅」、「伊庭邸」などと呼ばれています。
1978年に土地建物が旧安土町の所有となり、建物については老朽化のため取り壊される予定でしたが、ヴォーリズの初期の作品で文化的価値が高いものであることが判明したため、1979年に町指定文化財として保存されることになりました。現在は安土町郷土館として活用されています。
おすすめPoint
旧伊庭家住宅は木造の地上3階建で延床面積が352.36m2(1階214.02㎡、2階109.55㎡、3階28.79㎡)の建物です。
主体部と玄関からなり、主体部の外観はハーフティンバーと呼ばれる化粧梁で細分化された意匠の外壁に傾斜の強い天然石ストレート葺きの切妻屋根を乗せ、煙突を備えた洋風建築と入母屋造りで妻入浅瓦葺の和風玄関とで構成されています。このような外観の和洋折衷様式が大きな特徴に挙げられます。内外部ともに1階が和風、2階が洋風を基調とした造りとなっています。
当時としては異色の建築物です。毎年春と秋に一般公開されており、暖炉のある洋間や書院風座敷の和室のほか、美術教師として働いた慎吉のアトリエには、交友関係のあった画家や歌人からの手紙や作品も展示されています。
2009年7月31日にテレビ朝日系で放送されたドラマ『メイド刑事』の第5話「女帝と呼ばれたミステリー作家のトリックを暴け!」ではメインのロケ地に使われ、周辺の風景と共に、まるで過去にタイムスリップしたかのような不思議な雰囲気を醸し出していました。
周辺のおすすめ情報
ヴォーリズは実にたくさんの作品を残しています。旧伊庭家住宅から比較的近いところでは、JR琵琶湖線近江八幡駅近くの滋賀県立八幡商業高校本館(宇津呂町)、池田町洋館街(池田町)、旧八幡郵便局(仲屋町)、ヴォーリズ記念病院(北之庄町)、そのものずばりのヴォーリズ記念館(慈恩寺町)などがあります。
また、少し離れますが旧豊郷町立豊郷小学校(豊郷町石畑)もヴォーリズの作品です。校舎解体に関わるニュースで全国的に有名になった後、アニメ『けいおん!』で主人公たちが通う高校のモデルとなったことでさらに知名度を上げ、現在では多くのファンが訪れる「聖地」となっています。
ちなみに旧伊庭家住宅から徒歩20分~30分で、滋賀県立安土城考古博物館や特別史跡安土城跡、史跡安土瓢箪山古墳や史跡観音寺城跡にも行けますので、こちらもぜひどうぞ!
アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線安土駅下車 南へ徒歩10分
【自家用車】名神高速道路竜王IC下車20分、駐車場あり
◇公開期間:4月15日から6月3日までの各日曜日のみ
◇公開時間:10:00~15:00
◇展示物:旧伊庭家住宅の所蔵品
◇その他:来館者には、維持管理協力金200円をお願いしています。
一般公開は、ボランティア「一日館長」の協力で行っています。
◇お問い合わせ:近江八幡市役所安土総合支所 TEL:0748-46-7215
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(阿刀 弘史)
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