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近江上布伝統産業会館

新近江名所図会

新近江名所圖会 第118回 近江上布伝統産業会館

愛荘町
(愛知郡愛荘町愛知川)
近江上布伝統産業会館
近江上布伝統産業会館

毎日暑い日が続きます。この暑い時期に少しでも涼しく快適に過ごすには、麻素材の衣類などを活用するのが一番です。麻は木綿よりも吸湿速乾性に優れ、着ていても涼しく、洗濯しても乾きが早くてとても便利です。ふきんや手ぬぐいは清潔に保ちやすく、麻の使い勝手の良さを知るとやめられません。
近江は昔から上質の麻布の産地として名高く、今もその伝統を受け継いで麻素材の製品を作り続けている製造業者があります。そうした業者さんの集まりである滋賀県麻織物工業協同組合が運営しているのが、『近江上布伝統産業会館』です。

会館内のショップの様子
会館内のショップの様子

「伝統産業会館」なんていうと堅苦しい感じですが、全然そんなことはありません。入ってすぐのフロアはショップになっていて、麻素材を中心とした衣類やストール・手ぬぐい・布巾などの各種布小物、また無地や柄物の生地も扱っています。“麻”と一口に言っても、リネンやラミーなど種類がありますが、ここは各種置かれています。また、草木染め・本藍染めのものや布製品以外に天然素材だけで作った石けんなどもあり、こだわりのモノを探している人にはなかなか楽しいお店です。それから、いわゆる伝統工芸品としての「近江上布」についても、現物資料や関連書籍などが置いてあります。

おススメpoint

地機織りの様子
地機織りの様子

2階には昔ながらの手織りを再現できる機織機(はたおりき)が何台もあり、日によっては職人さんによる機織りの実演なども見学できます。機織りや苧績み(おうみ:繊維を糸にする作業を麻の場合は「績む(うむ)」と言います)体験もやっていて、手軽にできる半日コースから糸を手で績むところから始める長期コースまで、いろいろ選ぶことができます。また、季節やイベントで本物の藍染めや草木染めなどをやっていることもありますし、あるいは年に一度、麻の収穫時期にという苧麻(ちょま)から糸にする繊維を取り出す「苧挽き(おひき)」という作業を体験することもできます。これは全国で2ヶ所しかやっていないとても貴重な体験です。近江の伝統産業や布製品に興味のある人なら、とても楽しめるところです。
車で行く方が便利でしょうが、電車で行くのもなかなか乙なモノです。最寄り駅は近江鉄道愛知川駅ですが、大津方面からは少し時間が必要です。JR琵琶湖線近江八幡駅で近江鉄道に乗り換え、八日市駅でさらに彦根・米原方面行きに乗り換えなければなりません。2両しかない電車にゴトゴト揺られ、太郎坊さんの前などを通りながら小旅行気分です。愛知川のとなりの五個荘も近江商人のまちで、のどかな田んぼ混じりの町が広がっています。見どころが散在しているので、ゆっくり見て回りたいところです。

周辺のみどころ

愛知川宿

愛知川宿町並み
愛知川宿町並み
竹平楼の明治天皇ご休憩の石碑
竹平楼の明治天皇ご休憩の石碑

すぐ近くには中山道65番目の宿場町「愛知川宿」があります。国の登録有形文化財になっている、宝暦8年(1758)創業の旅籠の建物があったり(明治天皇が休憩された所だそうで、現在は「竹平楼」という料亭になっています)、昔ながらのたたずまいのお店などが多くあったりして、なんとなく古い町並みの雰囲気を楽しめます。また、旧街道沿いにはわずか100mほどの間に和菓子屋や餅屋が3軒もあって、ついハシゴしてしまいます。なかでも創業が慶応元年(1865)の『しろ平老舗』さんの店内ショウケースには、創業以来の古い菓子の木型などが盛りだくさんに展示してあって面白いです。お菓子も愛知川にちなんだものが色々あって目移りしてしまいますよ。気候のいい時期は宿場町をたどり中山道をてくてく行くのもよいかもしれません。

しろ平老舗店内の木型
しろ平老舗店内の木型

近江鉄道愛知川橋梁

五個荘駅と愛知川駅の間にかかる橋です。現存する明治末期建設の鉄道用トラス橋梁としては滋賀県下唯一のもので、開業以来100年以上経過した現在もなお現役として使用されている貴重な歴史遺産です (平成20年に登録有形文化財になりました。詳しくは県教委HP「近江水の宝」で紹介しています) 。

アクセス

【公共交通機関】近江鉄道愛知川駅から徒歩5分
【自家用車】名神高速道路「八日市IC」から20分

より大きな地図で 新近江名所図会 第101回~ を表示

(小竹志織)

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