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新近江名所図会

新近江名所圖会 第138回 湖北に浮かぶ神秘の島―竹生島

長浜市

私がこの原稿を書いているのは新年あけてすぐ、皆様はもうどこかへ初詣に行かれましたか? 気軽に初詣…には少しハードルが高いものの、御利益まちがいなしのパワースポットが竹生島です。竹生島は古来より信仰の対象とされていて、特に、室町時代末期からの七福神めぐりでは、都から一番近い「弁才天」を祀る場所として多くの参詣客で賑わったといいます。
そんな竹生島へは今も昔も変わらず船でしか行くことができません。湖北は湖上の風も強く、岩場だらけの島へは接岸するにも一苦労…。けれども、そういった苦難を乗り越えた先にこそ御利益があるかも…と考えるのは、今も昔も変わらないことなのかもしれません。現在の竹生島の港はコンクリートで護岸されていますが、それでも停泊中の船が大きく揺れるほど風の強い日も珍しくありません。

参詣道は石段につぐ石段
参詣道は石段につぐ石段

さて、そんな湖北のパワースポット・竹生島に信仰心を向けたのが一般庶民だけであるはずがありません。湖北の地で影響力(と財力)を持った人物もまた、竹生島に信仰と財力を傾けました。たとえば江北の雄:浅井氏、さらにそのあとを継いだ豊臣氏。竹生島には日本史に名を輝かせる英雄たちの足跡が残されています。
特に、豊臣氏は、秀頼の代になってからも竹生島への寄進を続けています。宝厳寺の唐門(国宝)は京都の豊国廟にあったものを移築したもので、陸続きではない険峻な島にあるにしては豪華すぎる門です。豊臣氏が、大坂に城を築いて本拠を移しさらに秀頼の代になっても、竹生島への寄進を続けたのは、秀頼の母である茶々の意向もあったのかもしれませんね。
また、この唐門の移築に際して奉行を務めた片桐且元の手植えと伝わるモチノキもあります。立て札はあるのですが、なかなか立ち止まる人を見かけないのが残念なところです。

おすすめPoint

外から見た舟廊下
外から見た舟廊下
舟廊下内部
舟廊下内部

さて、竹生島は明治の神仏分離令によって仏教である竹生島宝厳寺と神道である都久夫須麻神社とに別れた恰好ですが、多くの人は船を降りるとまず見るからに急な石段を上り、法厳寺の本堂(弁財天堂)を見てから石段を降り、先に書いた唐門をくぐって観音堂を通りぬけ、都久夫須麻神社へ向かうことと思います。この観音堂から都久夫須麻神社への渡り廊下も、豊臣氏ゆかりの建築です。
これは舟廊下(重要文化財)といい、朝鮮出兵の際に用いられた船を用いて作られたとも言われている部分です。外からは一見して普通の渡り廊下のようですが、中の天井を見上げてみてください。普通の天井とはまた違った形をしていませんか?

鳥居に向かって…
鳥居に向かって…

さらに、都久夫須麻神社の本殿(国宝)も豊臣氏ゆかりの建築物で、これは伏見城の建物を移築したものと言われています。
都久夫須麻神社では「かわらけ投げ」が行われています。素焼きの皿に願をかけて眼下の岩場に立つ鳥居に向かって投げ、鳥居の間をくぐれば願いが叶う…とはいうものの、これまで何度となく挑戦しても、そもそも岩場にすら乗らない筆者の願いが叶う日は来るのでしょうか(´Д⊂ヽ

アクセス

琵琶湖汽船
長浜港(JR北陸本線長浜駅から徒歩10分)から30分
今津港(JR湖西線近江今津駅から徒歩5分)から25分
オーミマリン
彦根港(JR東海道本線彦根駅からタクシー・バスで5~10分)から

※季節によって運行本数が異なりますのでそれぞれの運行会社にご確認ください。


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(伊藤 愛)

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