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新近江名所図会

新近江名所圖会 第322回 「あ!踏んでる!」 隠れた撮影スポット-㏌滋賀県立安土城考古博物館(その6)

近江八幡市
八幡社古墳群46号墳第1石室(東近江市)の復元模型(実物大)
写真1 八幡社古墳群46号墳第1石室(東近江市)の復元模型(実物大)

例年の4月から7月の安土城考古博物館は、近江八幡市や東近江市などの小学校や中学校が団体で来館されるのですが、今年は新型コロナの影響で団体見学が少なく、静かなような、さみしいような毎日でした。

◆おすすめポイント
さて、小中学生の団体が見学に来ると必ず使うセリフがあります。それがタイトルの「あ!踏んでる!」です。これは、当館の第一常設展示室入り口すぐ右側にある、古墳の石室の実物大模型で使うセリフです(写真1)。この模型は、東近江市にある八幡社古墳群第46号墳の3つある石室のうち、第1石室を再現したものです。八幡社古墳群については近江名所圖会第19回に掲載されていますので、詳しい内容はそちらをご覧ください。
内部は羨道(外から石室内にいたる通路)から石室までを再現しています。入り口から見て左側には窓状の切り抜きがあり、外からでも中の様子が見学できます。
この石室の模型は自由に中に入ってもらえるものです。被葬者の位置に人の形の照明の演出をしています。石室内の照明が明るいとよくわかりませんが(写真2)、照明が暗くなると、その人の形の部分がはっきりとわかります(写真3)。照明の明暗のリズムは約10秒で、中に入れば、明るくなったり暗くなったりを体験でき、足元の人の形に気づかれるお客さんは多いと思います。ところが、石室の壁を見ている時や、大勢で入ると、足元の人の形に気づかないこともあります。さて、小学生たちは、触れるものは触りますし、入れるなら入ります。もちろん皆こぞって、模型の中に入っていきます。

写真2 石室内部(照明が明るい時)
写真2 石室内部(照明が明るい時)

そこで私が何食わぬ顔で現れて、「あ!踏んでる!」と声をかけるのです。皆一様に何を踏んだの?と驚きつつも、よく分からないのでちょっと困った顔をします。そして「足元!足元!死んだ人踏んでる!」とダメ押しのセリフをいうと、大抵悲鳴を上げます。そうです、はっきり言って私が楽しんでいます。
でもそこから、「これは古墳時代のお墓で、死んだ人をこんなふうに葬ったんだよ。」などと解説をしていきます。そうすると、先ほどの驚きの顔から興味津々の顔に変わって、「え!そうなん!」や「これってお墓なん?」、「家かと思った!」などの反応が返ってきます。さらに、「このお墓、大きくない?」、「なんでここに葬られたってわかるん?」、「入口はあいたままなん?」など質問が飛んできます。そしてそれに答える、ちょっとしたギャラリートークが始まります。最後はみんなで石室に寝転んで記念撮影をします。

石室内部(照明が暗いとき)
石室内部(照明が暗いとき)

古墳時代の埋葬という、当時の生活の中ではごく一部にすぎませんが、石室内の様子に興味や関心を持ってもらい、そこから様々な歴史や文化財への理解につながればと思い、密かにこのような活動をしています。
皆さんも来館の際には、ぜひ中に入って、当時の石室を体感して、記念撮影をしてください。

◆アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線「安土駅」より徒歩約25分。またはレンタサイクル約10分。
【自家用車】名神高速道路竜王インターチェンジ、また八日市インターチェンジより車で約30分、蒲生スマートインターチェンジより車で約25分。国道8号西生来交差点を経由して加賀団地口交差点を右折すると博物館周辺です。

(福西貴彦)
所在地:近江八幡市安土町下豊浦6678

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