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新近江名所図会

新近江名所圖会 第332回 登って辿る近江の歴史-東近江トレイル猪子山〜繖山(東近江市)ー

東近江市
写真1 きれいに整備された登山道
写真1 きれいに整備された登山道

東近江市に所在する猪子(いのこ)山から繖(きぬがさ)山にかけて縦走する約7㎞程度のトレッキングルートを紹介します。このルートでは、近江の豊かな自然と共に、そこで築かれた歴史の一部を垣間見ることができます。岩船神社から急勾配の坂道、長い長い階段を登りきった先には、北向岩屋十一面観音が出迎えてくれます。しかし、ここからが本番です。
登山道と案内看板は、有志の方々によって整備されているため、とても歩きやすくなっています(写真1)。その一段一段の道をなす丸太には、一本一本運んだ方のメッセージが添えられています(写真2)。また、山中には100基以上からなる山面古墳群をはじめとして複数の古墳が造られており、道中においても立派な石室が確認できます。登っていくと絶景ポイントが所々にあり、繖山山頂(標高433m)からは、近江盆地の美しい田園風景と琵琶湖までを一望できます。
その先も、小鳥のさえずりを聴き、木洩れ陽の中で日光浴をしているトカゲを横目に山道を進んでいくと、佐々木六角定頼によって築かれた堅牢な造りの観音正寺城跡の石垣が目の前に広がります(写真3)。城跡からは湖上を往来する船舶を見渡すことができ、交通の要所をおさえるために、この場所に城郭を築く必要があったということを実感させてくれます。最後は西国三十三ヶ所霊場の三十二番札所観音正寺に到着します。ここで身を清め、東海道新幹線沿いの道まで下れば、ゴールです。

写真2 運び手のメッセージが刻まれた階段の丸太
写真2 運び手のメッセージが刻まれた階段の丸太

さらに私はここから欲張って、箕作山を越えて近江鉄道の八日市駅まで足を延ばしたのですが、新型コロナウイルス流行による自粛生活の中で運動不足気味であった身体には非常に堪えました。皆さんも無理のない範囲で、登って近江の自然と歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

◆おすすめPoint
猪子山道の途中に、真新しい丸太が集積されている地点があり、それを指定された位置まで運ぶと、その丸太は登山道整備の為に活用されます。豊かな自然と共に、先人達が築いた歴史を巡りながら、これからの「道をつくる」という、未来の歴史を紡ぐことに一役買えるというのが魅力の一つです。残念ながら、私が登った時には全ての丸太が目的地へ運ばれていました。ぜひ、再来してチャレンジし、貢献したと思っています。

◆周辺のおすすめ情報
登山ルートはバリエーションに富んだ各コースがあり、整備もされているので歴史好きにも、トレッキング初心者にもオススメです。案内看板に従って山道を進めば、安土城跡や滋賀県立安土考古博物館にも行くことができるのでぜひそちらにも足を運んで頂きたいです。

写真3 観音寺城の石垣
写真3 観音寺城の石垣

また、周辺には桑実寺(新近江名所圖会 第104回)や箕作山に所在する太郎坊宮(阿賀神社)などがあります。太郎坊内には岩と岩の幅が80㎝しかない夫婦岩もあり、願いを念じながら通ると叶うと伝承があるパワースポットです(新近江名所圖会 第94回)。しかし、悪い心の持ち主は岩に挟まれてしまうかもしれないのでご注意を。(佐藤巧庸)

◆アクセス
公共交通機関:JR琵琶湖線 能登川駅から徒歩約10分 (岩船神社入口)
自家用車:名神高速道路 八日市ICから約25分(同入口:駐車場なし)

(滋賀県東近江市猪子町)

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