記事を探す

新近江名所図会

新近江名所圖会 第343回 石に彫られた仏さま-湖南市岩根山の磨崖仏

湖南市
写真1 善水寺境内の磨崖不動明王
写真1 善水寺境内の磨崖不動明王

旧甲賀郡の西北地域(現湖南市域)の野洲川にそって続く丘陵地は、岩根と呼ばれます。
岩根山は、古くは石根山と書き、甲賀山とも言われていました。山体は花崗岩でできています。
この山の中腹には、最澄の祈りによって湧出したという湧水があり、この水で桓武天皇の病が癒えたという伝承を持つ、善水寺もここにあります。善水寺は、多くの国宝や重要文化財を所有することでも知られています。また、和銅年間に鎮護国家のため大きな寺が開かれ、十二の坊舎があったと伝わっています。この坊舎にまつわるいくつかの磨崖仏が存在しており、かつて多くの坊舎があって栄えた山寺があった、いにしえの姿が偲ばれます。

◆おすすめPoint
おすすめポイントは、岩根山の山中に残る磨崖仏群です。

◇岩根山善水寺の境内の磨崖不動明王(写真1)
善水寺本堂を少し下ったところに大きな磐があり、その岩の頂上近くにちいさな不動明王のお像が刻まれています。善水寺は本堂および中にいらっしゃる仏様達や、本堂周辺だけでも見どころが盛りだくさんですが(新近江名所図会199回)、帰り道にでも寄ってみてください。お不動さんの彫られた磐の根木には穴が穿たれ、興味深い造形です。

写真2 不動寺摩崖仏近景
写真2 不動寺摩崖仏近景

◇不動寺(黄檗宗)磨崖仏不動尊 (写真2)
善水寺から東のほうに下った川沿いに不動寺があります。延暦年間弘法大師創立、建武元年卜部入道充乗再建という伝承があり、もとは清涼山と称し天台宗のお寺だったようですが、享保19(1734)年に焼けてしまい、寛延2(1749)年再興、現在は黄檗宗のお寺になったとの由緒があります。ここのご本尊は川の流れを見下ろすように立つ巨巌に彫られた不動明王で、お不動様を拝顔できるようにお像の彫ってある岩の高いところに合わせて張り付くように懸け造りのお堂が作られています。像高は約150㎝、「建武元年三月七日卜部左兵衛入道充乗造之」の刻銘があるといい、半肉彫り、鎌倉期の作とされます。かなり高いところに彫ってあるので、拝める高さにお堂がしつらえてあるのはありがたい限りです。

◇岩根山 花園区 磨崖不動明王(写真3)
岩根花園集落から岩根山へ登る中腹に、渓流を見下ろすようにそそり立つ巨巖があり、ここに巨大な不動明王の像がきざまれています。高さ4.3m、幅2.1m、右手に持った宝剣の長さは2.3m。渓谷を隔てた道からもはっきりと見え、かなり大きなサイズであることが実感できます。像の間近まで登ってお参りできるようになっています。近寄るとさらに迫力満点です。通称、“車谷不動”と呼ばれ江戸初期の作と言われています。近江に足繁く通った随筆家・白洲正子も『かくれ里』のなかで「花園山中の不動明王」として触れています。(※ただし、現在は落石のため、川を渡って間近にまで近寄ることはできません。川を隔てた道からは拝観できます。2021年3月16日現在湖南市観光協会に確認。)

写真3 花園の磨崖不動(間近から)
写真3 花園の磨崖不動(間近から)

こうした磨崖仏の多くは水に関わるところで多く見受けられます。水源、水のめぐみをあがめる心根の表れなのかもしれません。

◆周辺のおすすめスポット
十二坊温泉ゆららがおすすめです。この土地から湧出する温泉につかることができる施設です。磨崖仏巡りのハイキングの後など、ゆったり休憩できます。お風呂や温水プール、食事処やオートキャンプ場などがあり、地域の特産品やちょっとしたお土産も販売しています。

◆アクセス
・善水寺
【公共交通機関】JR草津線甲西駅からコミュニティバス「下田線」「岩根」バス停より徒歩10分
【自家用車】名神竜王ICから約15分 駐車場有
・花園の不動磨崖仏
【公共交通機関】
コミュニティバスでJR甲西駅から「ひばりヶ丘線」、JR石部駅から「下田線(石部駅ルート)」などいくつかの路線があります。湖南市公式サイトのコミュニティバス「めぐるくん」の時刻表を要確認。「十二坊温泉ゆらら」から徒歩約15分。
【自家用車】名神竜王ICから約15分 駐車場無

※甲西駅―花園の摩崖不動―十二坊温泉ゆららー善水寺―不動寺―甲西駅 という全歩程約13kmのハイキングコースも設定されていますので、一部バスを入れるなどするともう少し楽に廻れます。(小竹志織)

Page Top