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新近江名所図会

新近江名所圖会 第349回 ちょっと昔の白髭神社―西近江路をたどる―(後編)

大津市
写真1 白髭神社前を通る江若鉄道(昭和44年 福田静二氏撮影)
写真1 白髭神社前を通る江若鉄道(昭和44年 福田静二氏撮影)

湖中の鳥居で有名な白髭神社周辺にはいろんな見どころがあります。今回はちょっと昔の神社周辺の様子の続きです。

車と鉄道の西近江路

写真2 江若鉄道の白髭駅のホーム
写真2 江若鉄道の白髭駅のホーム(琵琶湖文化館蔵)

時代の流れに乗り、昭和の初めに道の拡幅工事と江若鉄道の敷設がほぼ同時に行われました。この時点で、神社の前は大きく埋め立てられました。そして、2車線道路が敷かれ、昭和6年(1931)、江若鉄道(浜大津―今津間)が開通し、神社の前を通るようになりました。(註1)[写真1、2、3]

写真3 江若鉄道白髭駅の駅舎前を走る列車(左端の唐破風の建物が駅舎)
写真3 江若鉄道白髭駅の駅舎前を走る列車(左端の唐破風の建物が駅舎)(琵琶湖文化館蔵)

白髭神社は昭和の時代も滋賀を代表する名所のひとつでした。旧西浅井町(現・長浜市)の永原に生産拠点の一つ(註2)を構えていたヤンマーディーゼル(株)(現・ヤンマーホールディングス(株))は戦後、軽自動車の開発競争に参画し、永原の拠点から白髭神社まで試作車を走らせています。その時に撮られた記念写真が[写真4]です。(註3)白髭神社の前を通る道は琵琶湖湖岸の風光明媚を代表するような道となったのです。
江若鉄道はその後、国鉄(JR)湖西線に役目を引き渡し、跡地は道路の拡幅に使われました。湖西バイパスの建設のためさらに琵琶湖を埋め立てることも計画されましたが、景観も考慮して裏山をトンネルで抜ける案に変更となりそうです。

写真4 ヤンマーの試作軽自動車と白髭神社鳥居
写真4 ヤンマーの試作軽自動車と白髭神社鳥居

おすすめPOINT
参拝は湖辺(うみのべ)の道で
人気の白髭神社、JR近江高島駅から歩いて来られる方も大勢いらっしゃいます。国道161号沿いに歩いて来られるのですが、湖辺の道(旧西近江路・旧江若鉄道跡など)を歩いて歴史を感じながら白髭神社に参拝するというコースはいかがでしょうか。高島駅から乙女ヶ池の山側に残っている旧江若鉄道の線路跡を通って湖岸に至り(さらに山側に古代北陸道とされる細い道もあります)、少し寄り道をして鵜川四十八体仏の横を通り、ちょっとだけ今の湖岸から外れる旧西近江路を通って神社に至る道が推奨「湖辺の道」です。古代の北陸道とも考えられる歴史ある道を体感しながら歩くことができます。未整備で道案内もありませんので、ちゃんと下調べをして、山用の服と靴も用意して探検気分で挑戦してみて下さい。今後、整備されることがあれば、琵琶湖を眺めながら歩ける素敵な歴史古道となること間違いなしです。(案内図1)

案内図1 白鬚神社今昔図
案内図1 白鬚神社今昔図 (作図:ヨコタヨウゾウ)

周辺のおすすめ情報
《白ひげ食堂》
白髭神社のすぐ南。昔の江若鉄道の白髭駅の駅前にあたるそうです。食堂内には江若鉄道があった当時のこの食堂の写真があります。名物は「豚汁ラーメン」。具だくさんの「豚汁」や「おでん」もあります。
《CAFÉルヴァン》
白髭神社の大津寄り500ⅿ。景色最高。特にテラス席からの眺望は抜群です。建築家のご主人こだわりの建物もしつらえもGOOD!
こだわり食材を使ったシンプルなメニューもおすすめ。

アクセス
JR湖西線近江高島駅から3㎞、徒歩約45分。古道ルートは徒歩1時間。高島駅構内観光案内所にてレンタル自転車あり。予約乗合タクシーで13分。
(横田洋三)

(註1)江若鉄道の北小松―大溝(のちの高島町)間開業は1927(昭和2)年。
(註2)1949(昭和24)年、滋賀県伊香郡永原村(現・長浜市西浅井町)に永原農村精密工場完成。ディーゼルエンジンの部品を生産していた。
(註3)[写真4]に写っている車の中で後ろから2台目と3台目の2台がヤンマーの試作軽自動車で、技師が点検をしている様子がうかがわれます。車種は、手前から順にダイハツのハイゼット、愛知機械工業(株)のヂャイアント・コニー、ヤンマーの試作車が2台、最後がいすゞのヒルマン。
(写真は『OldTimer』№101、2008.8月号掲載より転載)

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