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新近江名所図会

新近江名所圖會 第360回 大戸川沿いの不思議な石積み―大津市牧―

大津市
写真1 大戸川にかかる橋から撮影した石積み
写真1 大戸川にかかる橋から撮影した石積み

コロナウイルスの蔓延で、現地取材に行く機会が難しくなっています。そこで、今回は過去に撮影した画像を紹介します。
平成25年の夏頃、大津市上田上牧(かみたなかみまき)の大戸川(だいどがわ)沿いを走っていたときに不思議な石積を認めました。
その場所は大津市牧集落の東端、大戸川右岸の護岸石積にあります(図1および写真1)。一見すると石積みのようにみえますが、よく見ると自然石の上に長方形の石を積み上げていることがわかります(参考写真)。
さらに観察すると、川に面した直方体の石は両端の一部を欠いて組み合わせ、10段にわたって築かれていました。また、側面も直方体の石を積み上げて築いていました(写真2および参考写真)。とても頑丈な石積です。

石積の参考写真(Googleマップストリートビューより)
石積の参考写真(Googleマップストリートビューより)

図1 石積みの場所 図2 明治時代の地図に記された水車

この石積は護岸から突出して築かれており、増水時には水流が直撃する場所に位置します。そのために不思議なまでに頑丈に築いていると考えられます。
おすすめPoint
しかし、なぜこの場所に頑丈な石積を築く必要があったのでしょうか。一帯の護岸石積を含めて、石積にコンクリートを使用しない「空積(からづみ)」という古い作り方で築かれていることから、明治から大正時代ごろに造られたと」考えられます。このときは、それ以上のことはわからなかったので、「昔に何らかの目的で造られたもの」という軽い気持ちで写真を撮って帰りました。
その後、田上山(たなかみやま)山中で発掘調査を行う事前準備として明治時代の地図を見ていると、不思議な石積付近に記された地図記号に気づきました(図2)。
赤色の記号は「水車」、緑色の記号は建物であることから、橋の北詰に水車小屋があったことがわかりました。 このことから想像をたくましくすると、この不思議な石積は、水車に関連する施設の可能性があります。もう少し郷土資料を調べたら詳しいことがわかるかもしれませんが、今回は不思議な石積の紹介にとどめたいと思います。
もしかしたら、この石積みについて詳しく調べておられる方がおられるかもしれません。その場合、ご教示賜れば幸いです。

写真2 道路側から見た石積側面の状況
写真2 道路側から見た石積側面の状況

(神保忠宏)

周辺のおすすめ情報
田上郷土史料館:地元の方が設立運営する資料館。昔の暮らしを知ることが出来る民具を収集展示しています。なかでも田上地域の衣料生活の資料はまとまった良好な資料として登録有形文化財に指定されています。開館は随時。
(連絡先:℡077-549-0369)

アクセス
【公共交通機関】帝産バス:JR石山駅から「信楽」行「牧口」下車(現在、信楽行の路線バスは土砂崩れのため「田上車庫」までしか行きません。田上車庫から「牧口」あたりへは約2キロくらいあります。バス以外の交通手段としては大津市ののりあいタクシー『光ルくん号』があります。予約先:077-522-6677、利用方法詳細は大津市のHPをご覧ください。)
【自家用車】草津田上ICより15分

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