記事を探す

オススメの逸品

調査員オススメの逸品 第173回 古墳時代の「甲冑」レプリカ-「復元品」に触れてみよう!

その他
写真 復元冑(かぶと)
写真 復元冑(かぶと)

みなさんは、「レプリカ」ってご存じですか?あるいは「復元品」や「複製品」という言葉を見たり聞いたりしたことはありませんか?博物館の展示ケースの中に、本物そっくりの顔をして鎮座しつつも、それを紹介するキャプションの端の方には、「レプリカ」「復元品」「複製品」っていう文字が小さく、でも確実に記されている、そんな展示品を一度はご覧になったことがあるのではないかと思います。それです。そのレプリカです。
そもそも「レプリカ」とは、さきにお話したように「本物の替わり」として用いられるものです。現在頻繁に用いられているレプリカは、ご存じの方も多いでしょうが、あくまで「見た目」にこだわった「複製品」が主流です。資料の現在の状況・状態を、色や形のような「見た目」の情報を重視して忠実に再現しています。錆びたモノは錆びたように、割れたモノは割れているように、です。こうしたレプリカを展示で用いるさいに、ガラスケースの中に置くことを前提として作られたもの、ともいえます。だから、その材料は樹脂などプラスチックのようなものでできていることが多いのです。となると、ケースから出して「触った」りしたら最後、本物とは明らかに違う、質感が全く異なるものであることにすぐに気づくでしょう。
ちなみに、よく似た表現で「復元品」というのもあります。私自身は、「複製品」とは区別してこの言葉を使うようにしています。複製品は「現状の再現」、復元品は文字通り「元の再現」です。つまり錆びる前、割れる前の状態を再現したもの、と考えれば分かりやすいでしょうか。そして「レプリカ」という表現は、これら複製品・復元品を一括りにした言葉としてご理解いただければ良いのではないかと思います。
さて、今回は滋賀県立安土城考古博物館の常設展示室に展示されているレプリカの中から、直接「触れる」ことのできる「甲冑(かっちゅう)」レプリカをご紹介します。この「甲冑」レプリカは、古墳から出土した資料の「復元品」です。製作当時の状況-つまり錆びる前の古墳時代頃の状態-を再現しています。
ちなみに、実物は、現在ではしっかり錆びて茶色くなっています。栗東市新開古墳から出土した国指定重要文化財で、滋賀県立安土城考古博物館の所蔵資料であり、しばしば常設展示室で展示されています(実物も、もちろん一見の価値あり!ですよ。)
この甲冑の復元品なのですが、とくに冑(かぶと)の方は、実物と同じ材質で作られています。この復元冑はかなり出来が良くて、実物の冑と同様に、同じ枚数の鉄の板を使って、同じ綴じ方で作っているので、すごく実物に近い質感なのです。復元冑のてっぺんには鳥(キジ)の羽がつけてあります。これは、冑のてっぺんに三又に分かれた金具(三尾鉄:みおがね)が接合された例があること、さらに三尾鉄の先に鳥(キジ?)の羽が組紐でくくり付けられた例が確認されたことに基づいて復元したものです。また、冑の内側には、布などを充てた痕跡は観察できませんでしたから、復元冑の内側にも充て布等は復元していません。
実は以前、滋賀県立安土城考古博物館のワークショップとして、この復元冑の装着体験を行ったことがあります。重さは2kgぐらいなのですが、なかなかの重量感で、ずっしりと重さを感じます。しかも、被った方の内の8割ぐらいの方が、綴具が頭に食い込んで「痛い!」と悲鳴をあげるのです。その痛さと重さとを感じながら、しかも痛いから余計に重たいと感じるわけです。痛いし重いし、ということで首をすくめる方が多かったのをよく覚えています。ですから、実際に被れれば、間違いなく重さを実感できるはずでしょう。
しかし、普段は展示ケースの中にあって、ケースの下10㎝ぐらいのところに小さな窓があいていて、そこから手を差し入れて触れるようになっています。なので、残念ながら被ることはできません。ですが、いずれまたワークショップなども企画されることと思います。一度被ってみたいな、と思われた方は、ぜひ楽しみにその機会を待っていて下さいね。
(鈴木康二)

Page Top