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調査員の履歴書

『インタビュー/調査員の履歴書』№24 一瞬の夏、一生の記憶 

Q お名前と所属部署を教えてください。

A 川嶋泰輔(かわしま たいすけ)と申します。調査課に所属しており、県内での発掘調査に従事しています。

Q 早速ですが、学生の頃はどんな学生さんでしたか?

A サークル活動やアルバイトなどに明け暮れた日々ではありましたが、「不器用ながらも本当は何になりたいのか」について模索していたと思います。なんとなく面白そうだし、周りの友達も参加するからという安直な理由で発掘調査に参加することに…。それでも、すぐ発掘調査の魅力に惹かれました。

 最初に参加したのは、京都府亀岡市の佐伯遺跡です。夏の暑い日々の調査ではありましたが、奈良時代の建物に使用された瓦が数多く出土しました。瓦の文様は同じであっても、一つ一つの色や形が異なり、なかには指紋の跡をのこすものもありました。この痕跡を通して、私は過去の人々と対話していると感じました。

 この素晴らしい出会いから1年後、発掘現場の能力や研究内容を同級生と比較して、センスがないと感じて、考古学と距離を置いた時期もありました。(この話は長くなるので後日、機会を頂けたらなと…) この状況を見かねて、大学の先生から夏休みに当協会の発掘調査の学生アルバイトの仕事を紹介して頂きました。現場の雰囲気はアットホームで和気あいあいとしたものであり、改めて考古学の楽しさを感じました。

 そういった経験があるので、学生さんに考古学の魅力を伝えることは大事な仕事だと感じています。

Q 就職してから経験した印象的なお話を教えてください。

A 作業員さんに対する指示で問題が生じてしまったことがありました。私が考えていたこと、作業員さんが取り組んだことの間に認識のずれが生じてしまい、作業員さんを困らせてしまったのです。

 当初、その原因は、私の伝え方や言葉足らずにあると想定しました。そこで私は、作業員さんへ説明する際、作業の重要ポイントはどこで、どの色の土まで掘っていって欲しいのか、見本を示すようにして伝えるようにしました。しかし、それでも同様に行き違いが生じてしまいました。

 この状況を先輩に相談したところ、「説明したことを理解して貰えているか、ということに焦点を当てて、確認作業をしてみたらどうか」というアドバイスを頂きました。それを試すようにしてから、私の指示通りに作業してもらえるようになりました。作業員さんが理解しているのかについて逐次確認すること、容易な言葉で指示を明確に伝えることの大切さを改めて痛感しました。

Q なるほど。確かにとても大切なことかもしれませんね。ところで、文化財や考古学に川嶋さんが興味を持ったきっかけはなにですか?

A きっかけは、中学2年生の頃に見たNHKの『クローズアップ現代』です。その時取り上げられていたのは「元寇」です。海底から出土したものが蒙古襲来絵詞に描かれた鉄砲玉に該当するのではないかというものでした。それを視聴した瞬間、「面白そう!」と思いました。ただ当時、部活動に熱心に取り組んでいたために、その感情は頭の隅のどこかに消えていってしまいました。

 高校生となり、やがて進路を選択する機会がやってきました。なんとなく「周りと同じことをしたくない」という思いもあって、頭の片隅にあった考古学を専攻する大学への進学を思い出し、担任の先生へ相談しました。すると、とある大学のパンフレットを見せてくれ、「この大学のオープンキャンパスに行ってみたら」とアドバイスをくださいました。入学してみると、自由な校風とアットホームな雰囲気だったので、とても気に入りました。

Q 最後に読者の皆さんへ一言お願いします。

A 読者の中には進路について悩まれている方もおられるのではないかと思います。かくいう私もその中の一人でした。ここで、とある先輩から頂いた言葉を紹介します。それは「頭で考えるより、直感を信じて行動する。それでもダメだったら、ちがう選択肢へ進むのもありだ」ということです。

 今でも悩むことはあります。そこで大切していることは、「楽しく、笑顔で仕事に取り組めるか」です。当協会には、こういった考えをもった職員が数多くいます。ご興味がある方は、当協会が主催するイベントや現地説明会に是非とも足を運んでみてください。そこにはきっと素晴らしい出会いの場があると思います。

写真1 2019年の8月に開催された当協会の公開イベント「あの遺跡は今 Part26」での風景。当時はまだ大学3回生で、アルバイトとして体験学習の補助に携わった。小学生に遺物の拓本作業を教えているところ。

(川嶋泰輔 調査課)

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