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新近江名所図会

新近江名所圖会 第311回 湖を見守る三つの古墳-大津市膳所茶臼山古墳

大津市
図1:現地の案内板
図1:現地の案内板

滋賀県には、100mを超えるような前方後円墳が3基あります。北から順番に挙げますと、彦根市にある荒神山の山頂部付近にある荒神山古墳、近江八幡市にある安土瓢箪山古墳、そして今回名所として取り上げる、大津市にある膳所茶臼山古墳です。
様々な研究者に取り上げられる安土瓢箪山古墳や、彦根城とも関連が深い荒神山に立地している荒神山古墳と比べると、少し地味な印象を受けるかもしれない膳所茶臼山古墳ですが、侮るなかれ、様々な魅力を内包している古墳なのです。

◆おすすめポイント
この古墳の特筆すべきところはその立地でしょう。現在は埋め立てや川によって運ばれた土砂によって内陸の古墳になってしまった膳所茶臼山古墳ですが、明治時代の古地図を見ると、おおよそ現在の京阪石坂線の線路が伸びている付近まで湖岸線であったようで、非常に湖と近接した立地であったことがうかがえます。

図2:膳所茶臼山からみた琵琶湖
図2:膳所茶臼山からみた琵琶湖

しかも、今ほどに高い建物が無かった時代でしょうから、湖から見える尾根上に造られた葺石(ふきいし)が白く光る膳所茶臼山古墳はさぞ琵琶湖から目立ったことでしょう。北側に祭祀を行った場所と考えられる造出(つくりだし)を設定していることからも、この古墳に祀られた人は琵琶湖側からの視線を気にしていたのでしょう。ただ、最近の研究成果から、あまりにも琵琶湖から見える北側に力を入れすぎて、南側の墳丘と左右非対称な形になってしまった、と少しお茶目な点も見えてきました。膳所茶臼山古墳にお越しの際は、是非古墳から、王様気分で琵琶湖を眺めてみて下さい、古墳造営者の思惑が読み取れるかもしれません。

◆周辺のおすすめスポット
【小茶臼山古墳】
膳所茶臼山古墳の南側に全長20m足らずの円墳がひっそりとあります。茶臼山古墳との関係は不明ですが、100m足らずの近場に立地している古墳がどういう関係にあるのか、考えてみるのも一興でしょう。ただし藪の中に立地しているので夏に行くと苦労することになります。

図3:現地では段築と造出部がしっかりと確認できる 赤線:造出部 緑線:段築部分
図3:現地では段築と造出部がしっかりと確認できる 赤線:造出部 緑線:段築部分

◆アクセス
【自家用車】 国道1号秋葉台交差点すぐ、駐車場あり。
【公共交通機関】 JR膳所駅を降りて南出口から茶臼山公園まで徒歩20分程度、もしくは京阪中ノ庄駅から徒歩10分程度かかります。特に茶臼山公園近辺はかなりの斜度がありますので、歩 きやすい服装で涼しい季節に行くのがおすすめです。
(遠藤あゆむ)


<参考文献>
笹栗拓・原田昌浩・森藤徳子・樫木規秀「膳所茶臼山の古墳研究(上)」『人間文化 第44号』大津市2018年

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